HIV系統群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/08 23:19 UTC 版)
「ヒト免疫不全ウイルス」を参照 1983年5月、パリのパスツール研究所のウイルス腫瘍部長リュック・モンタニエ(Luc Montagnier)とその同僚達が、後にエイズを引き起こす事が示されるウイルスを最初に分離した。彼らは、リンパ節腫大症候群の患者の腫張リンパ節の1つから分離した為、そのウイルスをリンパ節症関連ウイルス(Lymphadenopathy-Associated Virus:LAV)と命名した。他のウイルスの分離は、1984年8月サンフランシスコのカリフォルニア大学のジェイ・レビィ(Jay Levy)とその共同作業員によって示された。彼らはエイズ関連レトロウイルス(Aids-Associated Retro Virus:ARV)と命名した。1984年4月、国立癌研究所のロバート・ギャロ研究室員が、ウイルス患者への感受性が高く、他の感染したT細胞を破壊する殺傷作用に抵抗する能力がある癌性のT細胞を確認したと報告した。ギャロにより、「ヒトT細胞白血病/リンパ腫ウイルス(後にヒトT細胞白血病ウイルス Human Tcell Leukemia Virus:HTLV)」として公表された。このレトロウイルスは主としてT4補体細胞を攻撃するものであった。ヒトT細胞リンパ好性ウイルスⅠ型(Human Tcell Lymphotropic Virus Ⅰ:HTLV-Ⅰ)は成人T細胞白血病に関連するウイルスで、米国よりも日本人に多いとされ、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスⅡ型(Human Tcell Lymphotropic Virus Ⅱ:HTLV-Ⅱ)は、毛細胞白血病に関連するウイルスになる。ヒトT細胞白血病ウイルスは、動物の腫瘍ウイルスと多くの特徴を共有し、エイズウイルスに類似している。ヒトT細胞好性ウイルスのHTLV-ⅠとⅡは似ているが、全く違う方法でこれらは細胞に作用する。これらのウイルスはT細胞内で管理されずに分裂増殖する一方、エイズウイルスはこれを殺傷する。国立癌研究所(NCI)研究者は48人の患者からヒトT細胞リンパ球性ウイルスⅢ (Human Tcell Lymphotropic Virus Ⅲ:HTLV-Ⅲ)と称する新たなウイルスを分離したと報告した。これは、エイズを発症する活動性の遅いウイルスである事が分かった。HTLVの意味は、既知のすべてのレトロウイルスがTリンパ球への吸引力を共有するという事実から「ヒトT細胞リンパ球性ウイルス」とされた。医学文献では、エイズの原因となるウイルスはこれを含めて異なった名で呼ばれる。白血病や他のTリンパ好性細胞癌のようなリンパ性疾患を起こすことが知られているウイルス群の3番目のウイルスであると思われる為に付いた、ヒトTリンパ球性ウイルスⅢ型(Human T-Lymphocyt Virus type Ⅲ:HTLV-Ⅲ)は、レトロウイルスの一種であると考えられ、エイズ関連ウイルス(Aids-Associated Virus:AAV)又はリンパ節症(Lymphadenopathy-Assoiciated Virus:LAV)ともいう。これらは、疾病に対して抗体がつくられることによって、身体の免疫となる同じ白血球細胞である。1985年後半~1986年初頭には、名前問題を解決しようという事態が起こる。これは、研究者がヒトエイズウイルスに非常に類似したウイルスを確認した事から始まった。この類似したウイルスをSTLV-Ⅲ(サルリンパ好性ウイルスⅢ型)と命名したが、数ヵ月後、米国とフランスの研究チームが西アフリカで2つの新たなレトロウイルスを発見したと発表した。米国のチームはそのウイルスをHTLV-Ⅳと呼び、フランスのチームはLAV-2と呼んだ。その後の研究で、2グループの研究された群は同じウイルスによる異なった感染で、人間のエイズウイルスよりもサルのウイルスに似ている事が明らかになる。1984年5月、最終的にウイルス分類国際委員会は、人間のウイルスをヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)と呼び、サルのウイルスはサル免疫不全ウイルス(Simian Immunodeficiency Virus:SIV)と命名した。今日、HIV-1は、HTLV-Ⅲ、LAV及びARVのすべての分離物に用いられる。またHIV-2は、LAV-2及び全ての関連する分離物の公式名称となっている。
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