HDCDエンコード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 08:30 UTC 版)
CDソフトを制作する場合にはHDCDエンコードユニット内のA/D変換回路で変換された20bitデータを16bitに切り詰める必要があるが、HDCDでは人間の聴覚感度の低い16kHz以上の帯域にランダムノイズを集中させる“高域集中ディザ”を用いることによって、量子化語長を丸める際のグラニュラーディストーションを抑えた。A/D変換器が逐次比較マルチビット回路であり、量子化語長を丸める際には再量子化ノイズのパワースペクトラムを人間の聴覚感度に合わせて窪ませるノイズシェーピングは用いていないので、人間の耳では敏感な16kHzまでのノイズフロアは平坦とすることができた。 オプションの機能である“ピークエクステンション”を用いると、+9dBまでの波形尖塔部をアナログテープレコーダーが有するソフトクリップ特性でコンプすることができる。HDCDエンコード信号を通常のD/A変換ユニットで再生すると、波形尖塔部はソフトクリップ特性のまま再生されるが、HDCD対応D/A変換回路で波形尖塔部を再生すると、非直線量子化で再生することによって元の+9dB波形が復活再生される。また、小さな信号レベルが連続する場合には“ローレベルエクステンド機能”を用いると音量嵩上げ回路が働き、一種のノイズリダクション効果によってシステムノイズを低く高S/Nで音楽を収録再生することができる。一部の説明では、「ピーク エクステンション モードの復元可能で柔軟な制限により、最大 6 db まで信号レベルを上げることで、解像度を高めている」という説明を行なっているが、解像度が高められているのではなく、非直線量子化によって鈍らせた波形尖塔部が元の尖塔波形に復元される。また、ピークエクステンションは、楽曲全体を通じての記録レベルが低めで、ごく短時間のレベルが高まる場合に用いられる。ローレベルエクステンドについても、音楽の傾向によっては向き不向きがあるので、この機能を用いたHDCD盤は極めて少ない。このため、この6dB増幅記録/減衰再生を1bit分の解像度向上として説明することは誤りである。「高度なシステムを使用して、CD でのエンコードに 4 ビット分をプラスする」という説明を行なっている場合があるが、これはHDCDは高域集中ディザを用いてCDの16bitとするという基本的な仕組みを理解していないために、上記のような誤解を生じ易い解説をしていると思われる。 これらのHDCD回路動作判別は、隠しコマンド化されてディザ信号の中に記録されている。この隠しコードをHDCDデコード回路で検出することで16bit直線量子化の範囲を超えたダイナミックレンジを確保することができるわけである。 HDCDエンコードされたCDの44.1kHz16bit符号をリッピングし、そのデジタル音楽信号をそのままコピーしても判別信号は消失しないが、音量や音質を調整したり標本化周波数を変換すると隠しコードは消失する。
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