FJR710_(エンジン)とは? わかりやすく解説

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FJR710 (エンジン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/15 22:48 UTC 版)

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示されているFJR710

FJR710は、日本で研究開発された高性能ターボファンエンジンである。

1971年(昭和46年)から2期、計10ヶ年以上をかけて、通商産業省(現・経済産業省工業技術院大型プロジェクト制度の基に研究開発され、推力 (Thrust) 5,000重量キログラム(kgf)、燃料消費率(SFC)0.34、バイパス比6を目指した。

その成果はV2500エンジンなどに生かされている。

第一期

1971年(昭和46年)度-1975年(昭和50年)度、総開発費67億円[1]

通産省工業技術院、科学技術庁航空宇宙技術研究所(NAL)および民間3社(石川島播磨重工業三菱重工業川崎重工業)から技術者が派遣され設立された「FJRデザインセンタ」と、東京大学等の学界の研究開発能力を結集し、本プロジェクトは行われた。第一期では推力5,000 kgf クラスのターボファンエンジンの「試作」に重点が置かれ[2][3]、第1次/第2次それぞれで"FJR710/10"(推力4,500 kgf)および"FJR 710/20"(推力5,000 kgf)各3機が試作された[3]。これらが性能試験、耐久試験、耐環境試験に供された。

第二期

1976年(昭和51年)度-1981年(昭和56年)度(一部57年に繰越)、総開発費185億円(当初、その後減額されて130億円)[1]

「FJRデザインセンタ」は鉱工業技術研究組合法に基づき「航空機用ジェットエンジン技術研究組合」に名称変更された。第一期の成果をふまえて更に実用エンジンに近づけるため、FJR710/600 が3基設計製作(初号機完成が1978年度末)され、耐空性審査要領に定められた耐空性確認試験[4]に供された。

第二期第二次として推力7,000 kgfクラスのエンジン試作 "FJR710/700" も計画されていたが、基本設計に着手した段階で後述の理由により中断された。

飛鳥

1982年(昭和57年)12月にプロジェクトは終了し、その後の研究はNALに引き継がれた。

NALはFJR710/600をさらにブラッシュアップしたFJR710/600Sを6基製作した。航空自衛隊所属の試験用機C-1FTBに同エンジンを搭載してのエンジン空中試験1984年(昭和59年))等を実施した後、STOL実験機「飛鳥」に搭載し、1985年(昭和60年)10月28日の初飛行以降100回近くの飛行試験に供された(最終試験は1989年(平成元年)3月)[5]。エンジン総運転時間は7,100時間に達している。

研究成果

第一期で試作したFJR710/20は、1977年(昭和52年)にイギリスの国立ガスタービン研究所(National Gas Turbine Establishment :NGTE)に持ち込まれ、擬似高度エンジン試験設備を使用して高空性能を測定した[2]。この結果、FJR710が極めて性能が良いことが確認され、かつ試験中のエンジン不具合は皆無であった。この事実を高く評価したロールス・ロイス社は1978年(昭和53年)初頭、推力10,000 kgクラスのターボファンエンジン(ボーイング737-300などが想定機種)の共同開発を呼びかけ、1982年(昭和57年)には日英両国で各1機の試験用エンジン「RJ500」の完成に至った[5]

このRJ500エンジンは、ボーイング社がボーイング737-300のエンジンにGECFM56-3を選定したため、それ以上の開発は行われなかったが、翌年になりプラット・アンド・ホイットニーアメリカ)、MTU西ドイツ、当時)およびフィアットイタリア)の3社が加わり、スイスIAE(International Aero Engines AG)という名称のエンジン製造会社を設立(のちにフィアットは出資者から離脱)。ここでやや推力を高めた新エンジン「V2500」を開発した。この国際共同開発エンジンはエアバスA320マクドネル・ダグラス MD-90等に採用され[5][6][7]2018年6月時点で7,600台以上が生産された[8]

このような成果が評価され、2007年に日本機械学会の「機械遺産」に認定された[9]

仕様

STOL実験機「飛鳥」に搭載されたFJR710/600S

FJR710/600S

出典[10]

  • 形式:高バイパス比2軸ターボファンエンジン
  • 長さ:2,352 mm
  • 幅:1,300 mm
  • 高さ:1,700 mm
  • 重量:1,080 kg[9]
  • 最大推力:4,800 kgf
  • 圧縮機:1段ファン、1段低圧軸流圧縮機、12段高圧軸流圧縮機
  • 燃焼器:アニュラー型燃焼器
  • タービン:2段高圧タービン、4段低圧タービン
  • バイパス比:6[9]
  • 全圧力比:19
  • タービン入口温度:1,250 ℃[11]
  • 燃料消費率:0.39 kg/hr/kgf[9]

脚注

  1. ^ a b 川鉄テクノリサーチ (2001年3月). “国家プロジェクトの運営・管理状況分析調査報告書II ナショプロを軸とする産業技術研究開発施策のレビュー” (PDF). 経済産業省. pp. 169 - 174. 2005年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月25日閲覧。
  2. ^ a b 松木正勝 (1978). “FJR710ターボファンエンジンの研究開発について”. 日本航空宇宙学会誌 26 (292): 241-247. https://doi.org/10.2322/jjsass1969.26.241. 
  3. ^ a b 佐々木 2016, p. 3.
  4. ^ 航空エンジン技術開発センター 二村尚夫 (2005年11月22日). “航空エンジン運転試験法の研究” (PDF). 宇宙航空研究開発機構. 2008年4月27日閲覧。[リンク切れ]
  5. ^ a b c 吉中司『数式を使わないジェットエンジンのはなし』(A5)酣燈社〈航空情報別冊〉、1990年8月。63877-91。 
  6. ^ 社団法人日本航空宇宙工業会『日本の航空宇宙工業50年の歩み』社団法人日本航空宇宙工業会、2003年https://www.sjac.or.jp/data/walking_of_50_years/index.html 
  7. ^ IAE ホームページ
  8. ^ V2500 PRODUCT CARD”. プラット・アンド・ホイットニー. 2020年8月25日閲覧。
  9. ^ a b c d 機械遺産Mechanical Engineering Heritage”. www.jsme.or.jp. 日本機械学会. 2020年8月25日閲覧。
  10. ^ ガスタービン統計作成委員会編 『国産ガスタービン・過給機資料集-統計・生産実績・仕様諸元- 1989年版』、日本ガスタービン学会、162頁-163頁、1989年
  11. ^ 佐々木 2016, p. 7.

参考文献

関連項目

外部リンク




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