ベテルギウス
「ベテルギウス」とは、オリオン座α星と呼ばれる恒星の一般的な呼び名である。非常に巨大で明るい天体であり、地球から肉眼でも見える。ベテルギウスは赤色超巨星の代表例として知られている。銀河系からの距離はおよそ500~600光年と推定されている。
「ベテルギウス」とは(概要)
「ベテルギウス」は、オリオン座を構成する星のひとつとして知られ、また、冬の大三角のひとつとしても知られる。日本から観測する場合、夏場は太陽と同じ方角に位置するため観測が難しい。ベテルギウスは恒星(自ら発光する天体)である。地球からも明るく見え、その見かけの明るさは最上位の一等星と位置づけられる。ベテルギウスが「オリオン座α星」とも呼ばれる理由は、オリオン座を形成する星の中では最も明るいためである。
ベテルギウスの直径は、太陽のおよそ15倍~20倍程度と推定されている。太陽の直径は地球の約100倍であるから、ベテルギウスの直径は地球の約1500倍~2000倍ということになる。天文学的スケールを体現するかのような天体である。
「ベテルギウス」という言葉の意味・由来
「ベテルギウス」という名称は、ラテン語であり、「Betelgeuse」と綴る。英語の名称もこれを踏襲している。そして、この名前の由来・語源は、明確でない。もともと何語であったのかも定かでない。「ベテルギウス」の名称の由来として有力な説のひとつは、アラビア語で「巨人の腋の下」「中央の者の腋の下」「ジャウザーの手」といった意味を持つ、「イブト・アル=ジャウザー」が元になったという説である。これがラテン語では「Betelgeuze」と呼ばれ、そして現代英語の「Betelgeuse」に至っているとされる。
もしベテルギウスが「巨人の腋の下」という意味であるとすれば、「巨人」とはギリシャ神話に登場する狩人・オリオンのことであろうと考えられる。
オリオンは勇敢で力が強い狩人であったが、いつしか力に溺れ、傲慢な行動を繰り返すようになってしまった。そのため、ギリシャの女神であるヘラは、オリオンを始末するためにサソリを放った。そのサソリに刺されたことで、オリオンは命を落とした。そのことから、ベテルギウスを含んだオリオン座は、サソリ座が空に昇ると同時に、地平線へと逃げ隠れてしまうとされている。
ベテルギウスと星の死
ベテルギウスは「超新星爆発」に関する話題において頻出する天体でもある。これまでの観測により、ベテルギウスは恒星進化(いわゆる「恒星の一生」)の終末期に至っており、あるいはすでに星の死を迎えつつあるとされている。ベテルギウスは赤色の天体として知られるが、この赤色は恒星としての表面温度が低いためである。これは恒星の勢が衰えて温度が下がっている証左であり、すなわち寿命が近いと考えられるわけである。
ベテルギウスほど巨大な恒星は、恒星としての活動を完全に終えると、重力崩壊を起こして「超新星爆発」を起こす。そして残骸となる。ベテルギウスの大きさから、その残骸は中性子星になると予測されている。
ベテルギウスはいつ爆発するか
ベテルギウスは遠からず「超新星爆発」を起こして姿を消すと考えられている。具体的にいつ爆発するのかについては、おおむね「数年後~百数十万年後」の範囲内であろうと推定されている。宇宙科学の進展によってより精密な予測が可能になることが期待される。ベテルギウスはすでに星の生涯を終えて消え去っている可能性もある。ベテルギウスは地球から500~600光年ほど離れた位置にある、ということは、仮に今まさにベテルギウスが超新星爆発を起こした場合、その爆発が地上から観測できるのは、光が到達する500~600年後ということになる。もし、すでに500年ほど前にベテルギウスが超新星爆発を起こしていたとすれば、まもなくベテルギウスの超新星爆発が地上で観測できるであろう。
超新星爆発の瞬間、天体は極大の光を発する。その光量は銀河1個の発する光の総量に匹敵するとも言われている。ベテルギウスの超新星爆発によって放たれた光が地球に到達した際には、おそらく昼でも視認できるくらいには明るく見えると考えられている。
超新星爆発によって生じた光は、ある程度の時間をかけて徐々に暗くなってゆく。ベテルギウスの死による輝きは2~3ヶ月ほどは地上から明るく見え、更に数年は肉眼で見える明るさを保つとされる。そしてオリオン座α星は完全に姿を消すことになる。
ベテルギウス【Betelgeuse】
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