APN設定
「APN設定」とは・「APN設定」の意味
「APN設定」とは、一部のスマートフォンで、データ通信を行うために必要な設定のことであり、「APN」は「access point name(アクセスポイント名)」の略だ。スマートフォンを使用してモバイルデータ通信を行う場合、アクセスポイントという中継地点を経由することとなる。アクセスポイントは数多くあるため、他のアクセスポイントと区別する目的で、それぞれアクセスポイント名、APNが割り振られている。そして、特定のAPNを指定して、使用するアクセスポイントを決定する必要がある。その、アクセスポイントを決定することが、APN設定だ。また、APN設定によって、使用するアクセスポイントを変更する場合もある。スマートフォンでモバイルデータ通信を行う場合、あらかじめAPN設定をしなければならない。特に格安SIMを使用したスマートフォンの場合、通信のためのAPN設定は必須である。格安SIMの回線を使用する場合、あらかじめロックがかかっていないSIMフリーのスマートフォンか、キャリアのSIMロックを解除したスマートフォンを使用するのが基本だ。そのスマートフォンに、格安SIMの携帯電話会社が提供する、SIMカードを組み合わせる。
SIMロックがかかっていないスマートフォンは、あらゆるデータ通信にも対応できる状態だ。ただ、何も設定していなければ、使用する通信回線も決まっていない。そのため、スマートフォンの利用者はAPN設定を行い、格安SIMの携帯電話会社が提供する、データ通信の回線を指定しなければならない。APN設定をしなければ、データ通信を行うことは不可能である。
ただ、どのような場合でも、利用者によるAPN設定が必須というわけではない。大手キャリアであるau、ソフトバンク、docomoで契約し、キャリアからスマートフォンを購入した場合、使用前のAPN設定は不要だ。大手キャリアが販売するスマートフォンは、キャリアが提供する回線を使用することが前提で作られている。そのため、スマートフォンを出荷する前に、APN設定は済まされている状態だ。したがって、キャリアが提供するSIMカードを差し込むだけで、データ通信が可能となる。
また、格安SIMの中にも、ワイモバイルや楽天モバイルなど、あらかじめAPN設定が済んだスマートフォンを販売しているところがある。そのようなところで、回線の契約とスマートフォンの購入をした場合、APN設定は不要だ。大手キャリアと同様に、SIMカードを挿入するだけでデータ通信ができる。
APN設定が不要となるのは、スマートフォンの端末自体が、あらかじめ使用する回線に対応していることが条件である。そのため、大手キャリアであっても、そのキャリアに対応していない端末を使用する場合は、APN設定が必要となる。利用しているキャリアから、別のキャリアに乗り換える場合、スマートフォンのSIMロックを解除し、新しくSIMカードだけを契約することもある。その場合は、一般的な格安SIMと同様に、APN設定をしなければならない。
格安SIMの中には、uq mobileやワイモバイルのように、キャリアと同一事業者になっているものがある。しかし、事業者が同じであっても、キャリアと格安SIMでは、使用するAPNが異なる。したがって、キャリアから同一事業者の格安SIMに乗り換えた場合も、APN設定は必要である。
APN設定は、プリペイドSIMを使用する際にも必要となる。プリペイドSIMは、あらかじめ通信量と料金の上限が決まっているものであり、主に海外でスマートフォンを使用する際に用いられる。手持ちのスマートフォンに、海外の国や地域に対応したプリペイドSIMを挿入すれば、その国または地域でのデータ通信を使用できる。ただ、プリペイドSIMは、特定のキャリアで使用することを想定していない。そのため、APN設定によって、端末を現地で使用できるようにする必要がある。
APN設定は、基本的にはスマートフォンに関する用語として使用される。ただ、モバイルwifiの用語として使われることも珍しくない。モバイルwifiは、無線lanのひとつであるwifi通信を行うための、持ち運び可能な端末である。そのモバイルwifiも、スマートフォンと同様に、通信のためにSIMカードを使用する。大抵のモバイルwifiは、端末とSIMカードがセットになっていて、カードを挿入するだけで使用できる。しかし、それ以外の組み合わせを用いることもある。その場合、APN設定が必要となる。
APN設定を行うためにはまず、端末にSIMカードが挿入されていなければならない。SIMカードに記録されている情報と、APN設定を結び付けるからだ。そして、アクセスポイント名、APNが必要である。また、ユーザー名とパスワードも用意しなければならない。ユーザー名とパスワードの組み合わせによって、許可された人のみがアクセスポイントを使えるようになっている。そして、アンドロイドのスマートフォンと、iPhoneでは、それぞれAPN設定の手順が異なる。
アンドロイドの場合は、ネットワークの設定画面の中に、モバイルデータ通信の設定を変えられる項目がある。そして、大抵の端末は、いくつか回線の候補が挙げられ、その中から使用するものを選択することができる。そうでない場合は、回線に関する情報を手打ちで入力することになる。その後、APN、ユーザー名、パスワードを入力する。
また、セキュリティ認証のタイプを指定しなければならない。格安SIMを使用する場合は、どの認証タイプを使用するのかが決まっている場合がほとんどであるため、利用者が変更することは望ましくない。そうして、必要な情報の入力が終われば、APN設定は完了であり、アンドロイドのスマートフォンはデータ通信を使用することができる。
iPhoneでAPN設定を行う場合、アンドロイドのように、ただ設定画面で操作するだけでは不十分である。iPhoneでのAPN設定には、APN構成プロファイルというデータを使用しなければならない。そして、APN構成プロファイルは、選択するAPNによって内容が異なる。したがって、回線に応じたAPN構成プロファイルをダウンロードしなければならない。iPhoneの利用者は、格安SIMを提供する会社のページにアクセスし、APN構成プロファイルを入手する。そうして、APN構成プロファイルのダウンロードとインストールが完了することで、APN設定ができる。
iPhoneの場合、アンドロイドのように、APNとユーザー名、パスワードの入力は必要ない。APN構成プロファイルのインストールが完了した時点で、APNの設定は完了する。ただ、iPhoneは原則として、ひとつの端末につき、APN構成プロファイルはひとつしかダウンロードできない使用となっている。そのため、別の携帯電話会社から乗り換える場合は、既存のAPN構成プロファイルは削除しておく必要がある。
モバイルwifiのAPN設定は、端末にAPNとユーザー名、パスワードを入力する形である。アンドロイドのスマートフォンとほぼ同様の操作で、設定の変更が可能だ。APN設定は、どの端末を使用したとしても、比較的簡単な操作で行える。基本的には、必要な情報を入力したり、データをダウンロードしたりする程度で済むため、利用者に操作が委ねられている。ただ、そのような操作が、利用者の負担になることを防ぐために、APN設定を行わず、SIMカードを挿入するだけでデータ通信ができるようにしている会社も少なくない。
「アクセスポイント名」という用語は、スマートフォンやモバイルwifiだけでなく、持ち運びをしないwifiにも使用する。ただ、その場合、「APN」ではなく、「サービスセット識別子」という意味の「service set identifier」を略した、「ssid」という言葉が使用されることがほとんどである。そこから派生して、「ssid設定」という言葉が使われることも多い。そのため、「APN」や「APN設定」といった言葉は、据え置き型のwifiに関する用語ではなく、スマートフォンやモバイルwifiの用語として定着している。
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