69型巡洋戦艦
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「クロンシュタット級重巡洋艦」の記事における「69型巡洋戦艦」の解説
この頃、イタリア海軍はフランス海軍が建造していたダンケルク級戦艦(基準排水量26,500トン、主砲33cm砲4連装2基8門、速力30ノット)に対抗すべく、旧式戦艦コンテ・ディ・カブール級戦艦の大規模な近代化改装に着手した矢先で、2万トン級の中型戦艦・大型巡洋艦の研究実績・設計案には事欠かなかった。そのお陰で、幸運にも同時期に似たような艦種を模索していたソ連海軍はイタリアからの設計案の提供に恵まれていた。そうした時期にアンサルドから「1936年度巡洋戦艦案」が提案された。これは満載排水量26.700トンで25cm砲3連装3基を搭載すると言うもので、第一中央造船設計局はこれを踏まえて既存の「X型巡洋艦」と「22型装甲巡洋艦」を組み合わせて列強の重巡洋艦に対抗可能で、単独での通商破壊戦を可能とする「69型重巡洋艦」の設計を1936年11月に承認した。要求性能は、満載排水量22,000-23,000トン、主砲は25.4cm(10インチ)砲9門、速力34ノットで、設計は第一中央造船設計局から改名された第17中央設計局が引き続き担当した。 原案は1938年6月にニキチン主任設計士官が完成させ、海軍はそれを承認した。だが、ここでスターリンは「69型重巡洋艦の主任務はドイツ海軍が建造中のシャルンホルスト級戦艦を超えるものである」と要求性能を吊り上げた。69型重巡洋艦の初期案は条約型重巡洋艦を凌駕するものだったので、25.4cm砲ではドイツ海軍の巡洋戦艦には対抗不能である。そのため、海軍は「69型重巡洋艦」の要求性能を改定し、主砲は25.4cm砲から30.5cm(12インチ)砲へ、基準排水量は32,870トンへと大型化された反面、速力要求は34ノットから32ノットへと若干下げられた。 しかし、スターリンの発言を重く見た海軍当局は合同で特別委員会を設置し、対抗艦を排水量的に同クラスであるドイツ海軍のシャルンホルスト級戦艦とフランス海軍のダンケルク級戦艦、イギリス海軍のレナウン級巡洋戦艦、イタリア海軍の改装戦艦コンテ・ディ・カブール級戦艦とカイオ・ドゥイリオ級戦艦、日本海軍の金剛型戦艦に定めて研究した結果、本級の要目が定まった。基準排水量はシャルンホルスト級に並ぶ38,540トン、主砲は30.5cm砲3連装3基9門で速力32ノットという、紛れもない高速戦艦であった。この結果に気を良くしたスターリンは建造を承認し、建造を早急に行うよう命令したために1939年11月に1番「クロンシュタット」がレニングラード造船所で起工、2番艦「セヴァストーポリ」がニコラエフ造船所で起工された。なお、スターリンが建造を承認した時点では大まかな設計案は決まっていたが、最終設計は定まっておらず、最終決定案は起工後の1940年4月11日に承認された。
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