1990年以後の変化
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「社会的市場経済」の記事における「1990年以後の変化」の解説
1990年代初頭、フランスの経済学者ミシェル・アルベルト(ドイツ語版)は、ドイツとアメリカの経済システムを多面的に比較したなかで、ライン型資本主義(ドイツ語版)というドイツのモデルは現状では経済的にも社会的にもアメリカよりも優越していると強調した。もちろん彼は、アメリカの競争相手からの政治的・メディア的・文化的影響を受けて、ライン型資本主義が後退するだろうとも推測している。 1980年代におずおずと始まった民営化、規制緩和、脱国有化の流れは、1990年代半ばから、著しく加速した。特に、金融セクターの自由化は決定的な影響を与えた。2000年の税制改革(ドイツ語版)で法人税法が変更となり、ドイツ株式会社(ドイツ語版)は、撃滅されることになった。なぜなら、SPD政治家のハンス・アイヒェルによると、緊密に絡み合った経済関係という風土をもつドイツモデルは硬直しており、グローバルマーケットの要求には全く向いていないからである。ここで生じた変化は、長期的に企業の資産とパースペクティブを最適化するというステークホルダー価値から、アングロサクソン系の国々で昔から採用されていた短期的な利潤を追求する株主価値への方向転換であった。(国際基準にあわせた)会計実務への変更、高い系絵者報酬などもそうであるが、こうした変化は、ドイツ大企業の経営方針に大きな影響を与えた。さらにこのことは銀行家組合の制度的な変更さえもたらした。まだ1990年代初めには、ドイツ銀行の取締役会スポークスマンが、銀行セクターの内外で承認されており、ドイツ株式会社の最後の砦として、誤った方向へと発展しそうな場合には干渉していた。評判を気にした経営方針は、高度に投機的なビジネスへ、特にデリバティブへの誘惑に屈することになった。 ドイツ統一による一連の経過に関してカール=ハインツ・ペック(ドイツ語版)の見解によると、「社会的市場経済の再生は、[...]かなりの部分で成功」した。 それに対してヴェルナー・アーベルスハウザー(ドイツ語版)は、アングロサクソン的な慣行と生産体制の交換に対して警告している。長期間にわたって発生している構造は、急速に壊れつつあるが、新しい慣行と組織形態は、ゆっくりとしか作り上げることはできない。そのような根本的な運用が成功するかどうかは不確かなままである。ドイツ経済の生産性は世界トップと肩を並べており、ライン型資本主義はこのことに貢献している。そのイノベーション能力については批評家にとっても異論の余地のないものである。さらに2007年の世界金融危機が示しているのは、伝統的な社会的市場経済のいう意味での生産的な秩序政策と国家の枠組み設定は、グローバル化の状況下においても、決して古ぼけたものにはなっていなおらず、むしろ以前よりも切迫して必須のものとなっている。
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