1990年代後半:戦後最大の自殺者数の急増
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「日本における自殺」の記事における「1990年代後半:戦後最大の自殺者数の急増」の解説
1998年(平成10年)にはバブル崩壊後で特に相次いだ国内の金融機関破綻があり、年間自殺者数が32863人(警察庁発表。人口動態統計では31755人)となり、統計のある1897年以降で初めて3万人を突破した。2003年(平成15年)には34427人(人口動態統計で32109人)に達し、現在までにおける過去最大数となっている。 1998年以降から近年まで続いたピークは戦後最大のものであった。それまで約2-2.5万人程度であった年間の自殺者数が3万人以上で推移する状況にあったが、1998年は前年の24391人から8000人以上も急増(前年比約35%増)した。うち25%は45歳以上の層のもので、中高年の自殺増が急増への寄与が大きい。急増した原因として景気の悪化を指摘するものも多く、各種統計や自殺者の遺書などから、今回のピークの原因は不況によるものと推測されている。OECDは90年代後半の自殺増の理由としてアジア通貨危機を挙げている。また読売新聞1999年8月7日付けの記事では自殺の急増、とりわけ男性の自殺者が増えたしたことを報じたが、そこでは「元気ない男性」として、男性が家事や育児に参加して男性の意識改革を図るべきとジェンダー論から自殺原因や対策を報じた。不況の影響を受けやすい中高年男性でピーク後の自殺率が特に急増し、遺書から調べた自殺原因では、1998年以降、ピーク前と比べて「経済・生活問題」が急増している。内閣府経済社会総合研究所の統計では、失業要因が安定して有意に男性自殺率を増加させ、1998年以降の30歳代後半から60歳代前半の男性自殺率の急増の要因は、雇用・経済環境の悪化である可能性が高い事が年齢階層別データ分析、都道府県別年齢階層別データ分析の双方において確認できる。女性の自殺率はピーク前とあまり変わらず、男性の自殺率の影響が顕著である。男性は高年齢層で自殺しやすく、高齢化は男性の自殺率増加の原因を2割程度説明する。年齢別で見ると、40〜60代の増加が顕著で、特に60代ではピーク前の3割増になっている。 以上の1998年以降の「定年に至っていない中高年男性の自殺率増加」の背景には、過去のものとは動向が異なり、「経済・社会的な要因」が大きく影響している可能性が指摘されている。2003年(平成15年)には、年間自殺者数が3万4千人に達し、統計のある1897年以降で最大(自殺率も27.0と過去最大)となった。
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