-35ボックスと-10ボックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 22:28 UTC 版)
「プロモーター」の記事における「-35ボックスと-10ボックス」の解説
真正細菌のプロモーターにはRNAポリメラーゼを強力に引き寄せる2つの仕組みがある。一つは転写開始点から35 bp上流にある-35ボックス (-35領域または-35配列 とも)、もう一つは10 bp、より正確には-18~-9上流の-10ボックス(-10領域または-10配列とも。当初は発見者のデビット・プリブノーにちなんでプリブノーボックスとも呼ばれていた)である。2つは15~19 nt、例外的に長いもので20 nt離れる。 現在、数千ものプロモーターが調べられ、これら各ボックスにおける典型(共通配列、コンセンサス配列)が明らかになっている。共通配列とは現れる頻度の顕著な塩基配列であり、下図1に示す。図2に、各構成塩基ごとの存在する確率を記す。各ボックスが共通配列に完全に一致すると転写開始は劇的に頻発するだろう。実際には一致する例は少ないが、類似度合いの大きさがプロモーターの強さ(転写の頻度)となる。実際、各ボックスを典型に近づける突然変異は優勢変異といい、プロモーターを強力にして転写開始を促す。逆に、類似性を下げる変異である劣勢変異を受けたプロモーターは弱い。劣性変異の様相は受けるボックスによって変わり、-35ボックスの場合は閉鎖型複合体を形成する速度を減少させる。-10ボックスでは、閉鎖型複合体に問題はないがそこから開放型複合体になるのは遅い。このことから-35ボックスはRNAポリメラーゼに認識される部位、-10ボックスは二重らせんをほどくのに重要な部位だと考えられている。 例外的に、一方または両方のボックスを持たないプロモーターも存在する。この場合、補助因子がRNAポリメラーゼの認識を助ける。また、両ボックス以外の、最初に転写される+1~+30の領域もRNAポリメラーゼとDNAの結合の安定性に影響する。 大腸菌の中には、-35ボックスの代わりにいわゆる「延長した-10ボックス」を持つものもいる。この配列とRNAポリメラーゼとの間の接触が-35ボックスの欠如を補う。例として、ガラクトース代謝に関与するgal 遺伝子群がある。 このほか、-10ボックスのすぐ下流にRNAポリメラーゼと結合する弁別要素が発見された。酵素とプロモーターの作る複合体の安定性に影響を与える。プロモーターの各要素は サブユニットの一つであるσ因子と結合してRNAポリメラーゼを誘導する。どのように結合するのかはRNAポリメラーゼ#σ因子に詳述している。 上流 プロモーター mRNAに転写される領域 下流 5'----------|TTGACa(-35)|---------|TAtAaT(-10)|----------------------|T|------------3' 3'----------|AACTGt(-35)|---------|ATaTtA(-10)|----------------------|T|------------5' |転写開始点 |---------------------> mRNA図1.プロモーター配列と転写開始位置の位置関係出現頻度が50%以上の塩基は大文字で、以下のものは小文字にして示す。 T; ターミネーター-10; -10ボックス -35; -35ボックス -10ボックス:T(80)A(95)T(45)A(60)A(50)T(96)-45ボックス:T(82)T(84)G(78)A(65)C(54)A(45)図2.-10ボックスと-35ボックスの共通配列および各塩基の存在確率確率の百分率を各構成塩基の右に () 内で記す。
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