黙って野たれ死ぬな
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:39 UTC 版)
「やられたらやり返せ」が現場闘争のスローガンであるのに対し、「黙って野たれ死ぬな」は越冬闘争のスローガンである。 寄せ場では、特に正月を代表するように冬には仕事がなくなり、しかしアオカン(路上や公園での寝泊まり)も難しくなる。寄せ場の冬とは日本資本主義の構造的矛盾の季節的表現であり、下層労働者の悲惨、困窮、圧迫が集中することであり、(歳を取ったり病気になったりして)不要となった労働力が野たれ死んでいくということである。若く健康なときにはあった仕事も老いていくとなくなってしまう。黙っていれば、野たれ死ぬのが下層労働者の未来なのである。 現場闘争の中から生み出された戦闘的青年労働者の組織釜共闘が、ただ単に青年労働者の利益のために闘うだけではなく、資本によって労働力商品としての価値を否定された病人、老人、(中略)アル中たちを引き受けようとしたこと、否、彼らが参加できる形で共に闘おうとしたこと、そして、敵と対決し、打ち勝つために衣食住総体の労働者階級の問題を解決しようとしたこと、これが越冬闘争の意味である。労働者が革命を起すということは、生産手段を労働者がわがものとし、衣食住の問題を自分の階級で解決することに他ならない。 —船本洲治『黙って野たれ死ぬな』2018年、p.179 越冬闘争のスローガンには加えて「生きて奴等に仕返ししよう」「仲間たちのなかから一人の死者も出さない」というスローガン・決意がふくまれている。 「生きて奴等に仕返ししよう」には資本への敵対性が、「仲間たちのなかから一人の死者も出さない」には階級の連帯意識が存在する。「やられたらやり返せ」の中にあった流動的労働市場での「下層労働者の連帯」と「資本階級との対決」の意識が「黙って野たれ死ぬな」のスローガンではさらに範囲を広げて生存闘争の領域へと拡張している。船本は「越冬は俺たちにとって不退転の闘いである。」と言い、夏にはチヤホヤしながら冬には知らん顔をし、若いときにはチヤホヤするが年を取ったり病気になったりしたら野たれ死んでも構わないという資本階層の要望を聞くわけにはいかないとし、 俺たちは仲間たちの中から一人の死者も出さない、という決意の下に越冬に取り組む。(中略)この俺たちのささやかな越冬のの要求すら妨害し、あくまで飢えて死ね、とイチャモンを付けてくる連中に対して、俺たちはあらゆる手段を用いて闘わなければならない。 —船本洲治『黙って野たれ死ぬな』2018年、p.175 と宣言している。 原口は、越冬闘争では冬を生き延びること、それ自体が闘争であり労働運動の枠を超えた未踏の闘争領域である。と解説している。
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