香港での生活面から切り込んだ見方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 15:55 UTC 版)
「バスおじさん」の記事における「香港での生活面から切り込んだ見方」の解説
多くの人々がこのビデオをユーモラスで愉快なものと見なしているが、他方、これをストレスに満ちた香港での生活に対して、より多くの警鐘と不吉な予感を孕んでいると警告する者もいた。バスおじさんが香港ラジオテレビ(RTHK)によって「今年を代表する人物」の次点候補にさえ挙がった事実が、一般住民にある共通した感情が流れていることを指し示している。 著名コラムニスト、トー・キ To Kit(陶傑)は商業ラジオ局でこの事件についてコメントを寄せた。彼はバスおじさんの振舞いを「騒音によるレイプ」と表し、事件は隠された社会的緊張が表面化したものであると同時に、中国人に共通した物の見方の現れだと述べた。彼は、ホーの弱々しすぎる無口な態度に、現代の香港に生きる若者の典型を見いだし、これを論評した。加えて、事件は住民同士の調和というものがいとも簡単に崩れることを暗に意味するものだと述べた。 香港中文大学にある香港・ムード・ディスオーダー・センター(香港健康情緒中心)のディレクター、リー・シン Lee Sing は、ストレス度の高い労働環境が、香港中に次のバスおじさんを生み出させていると警告した。リーは、香港人の不機嫌な50歳代全てが、怒りを暴力で爆発させる「作動中の時限爆弾」の状態にあると推測した。 ジャーナリズムの教授でインターネットの権威であるアンソニー・フン・インヒ Anthony Fung Ying-him は香港のこの感情まかせな傾向は「ありふれた出来事」を捕らえた低解像度のビデオ人気のせいでもあるとしている。口コミで広がる類のビデオはある偏った層にばかり受け入れられるものだが、今回は「市井の人々の真実味ある」普遍的な表現のために幅広く広まっていったのだ。 他方、香港理工大学で社会学の講師を勤めるホー・クォック・リュン Ho Kwok Leung は、ありがちな味気ない生活の反映であるこのビデオを取り巻く、香港人の強い関心について興味を持った。論じるに値する興味深い話題だが、人々はインターネット上で伝染する文化的遺伝子といえるものの創造と、莫大な視聴者へ情報を広めていく楽しみを味わおうとしたのだ。そのうえ、いくつかのビデオから生まれたキャッチフレーズが学校で使用禁止になったことで、逆にそのビデオについて、より興味を引かせる結果になった。リュンによれば、こんな状況が「ビデオ・クリップ・カルチャー」の繁殖につながる肥沃な土壌となっているのだ。
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