飛翔制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 06:48 UTC 版)
詳細は「ミサイルの飛翔制御方式」を参照 ミサイルの飛行方向を制御するには以下の方式がある。 排気ベーン ノズルの中に排気ベーン、またはジェットベーンと呼ばれる推力偏向板を設置し、これを動かすことで推力方向を任意の方向へ向けて機体を制御する。史上最初の弾道ミサイルであるV2/A4には黒鉛でできた排気ベーンが採用されていた。V2/A4の直接の子孫であるR-17 (SS-1B Scud)でも排気ベーンが採用されている。 翼による空力制御 ミサイルに取りつけた翼を動かすことでミサイルの姿勢を制御する。現状では最もポピュラーな制御方法である。宇宙空間に進出する弾道ミサイルではこの方法は使用できない。またミサイルの側面に翼が取りつけられるため体積効率が良く無い。このため保管の際には分解しておき発射直前に翼をとりつけたり、翼を機体内に格納したり機体まわりに折り畳んでおき、発射後に自動的に伸展する方法が取られる。一般には後退翼や三角翼がもちいられ、動翼と静翼の二組が取りつけられる。静翼はミサイルの方向安定を司り、大きな面積を持つ。動翼はミサイルの操縦を司り、誘導装置からの信号を元に操縦装置によって駆動される。多くは動翼を後翼とするが高機動ミサイルでは動翼を前翼とする設計もある。三角翼では翼幅が大きくなるため、スペースに制約がある艦載ミサイルではスタンダードミサイルや発展型シースパロー(ESSM)艦対空ミサイルのようにミサイルの全長に渡って取り付けられた細長い翼を静翼とする設計が用いられる。ロシアでは短距離弾道ミサイル OTR-21 Tochka (SS-21) に採用された「すのこ尾翼」が空対空ミサイルの R-77 でも採用された。この形式の尾翼は最小限の体積で表面積を大きく取れるため有効な操縦が可能とされる。 可動ノズルによる推力偏向制御(TVC:英: thrust vector control) ロケットエンジンのノズルをジンバルやスイベルなどに載せて可動とし、ノズルの方向を変える事で推力の方向を変更しミサイルを操縦する。翼による空力制御と異なり大気圏外でも使用できるほか、翼が不要になればミサイルはコンパクトとなり体積効率が良くなる。航空機では狭い機内や機外により多くのミサイルを搭載できるようになる。ノズルの機構は複雑になる。アメリカのジュピター中距離弾道ミサイル、ポラリス潜水艦発射弾道ミサイル、VL-ASROC対潜ミサイル等で採用されている。 バーニアノズルによる制御 主エンジンとは別に姿勢制御用の小型ノズル(バーニアノズル)を設置し、適宜噴射して姿勢を制御する。史上最初の大陸間弾道弾であるR-7のRD-107/RD-108エンジンでは合計12基のバーニアノズルで姿勢を制御していた。バーニアノズルは独立したロケットエンジンである場合と主エンジンの排気を導く場合がある。
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