金融制度上の観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 04:34 UTC 版)
「通貨スワップ協定」の記事における「金融制度上の観点」の解説
通常、金融機関では取引者間の資金口座を通じた振込み決済は、勘定系システムに一定時間ごとのバッチ処理をおこなっており、顧客が振込み手続きをおこなっても、すぐには相手口座に反映されることはない。 これは、銀行の預金業務そのものに関する制約であり、金融機関は通常、顧客からの預り金を融資や債券売買などの資金運用にまわしており、手元に現有している現金や譲渡性預金の額は統計的に予測される日常業務に必要な額に留まっていることが通常である。 顧客が、自らの資金口座から他行宛に振込依頼をおこなう場合、金融機関は自らが保有する現金や譲渡性預金の中から、他行宛に送金を行っており、この金額が総額として不足しそうな場合には、短期金融市場で社債(国債など)を売却することで、資金調達を行っている。 ところが、通貨危機などにより、銀行決済需要が急激に拡大する場合、民間の金融機関は互いに自社の外貨を厚めに持とうとし、とくに金融機関の間にカウンターパーティリスクが存在する場合、貸し出しに慎重となるため、短期金融市場から主要な決済通貨(アメリカ合衆国ドル)が枯渇し、異常な高金利がつくことがある。この短期金利の急騰は、中長期金利市場に波及し、急激な為替変動や新興国など向け融資の「巻き戻し」を伴い、世界経済全体に波及するリスクをもたらす。 また、こういった場合の外貨の供給手であるべき中央銀行でも、統計的に予定されていた外貨準備(決済用)が不足し、市中からの資金需要に対して十分な流動性の供給が困難になることがある。この場合「市中では有効な契約が結ばれ振込み履行したにも関わらず」外貨不足により金融決済ができなくなる可能性が生じる。 この局面での通貨スワップは、金融当局に直接の為替リスクは発生しておらず、為替リスクは全て市中が負担している。金融当局は10兆円で1,000億ドルの通貨スワップ協定を締結し、1,000億ドルを市中に貸し出したとしても、結果として1,000億ドルを市中から期限内に回収して、スワップ期限までに1,000億ドルを返済して10兆円の返済を受ければよい(※金利考慮せず)。 2008年に発生した金融危機において、FRBが各国中央銀行と実施した「無制限の米ドル供給」を目的とした、通貨スワップ(主要5行2008年10月15日、世界14行10月30日)は、この趣旨に拠るもので、米ドル資金供給を受けた各国中央銀行は、自らが管轄する金融機関に対する通常の信用リスクのみを負担し、米ドル資金を無制限で供給した。
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