金属水素化の反応性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 02:45 UTC 版)
「カルボニル還元」の記事における「金属水素化の反応性」の解説
金属ヒドリドを用いる場合、還元剤の強さは4つの因子によって決まる。1つは対イオン(英語版)がカルボニル基の酸素に配位することでどれだけ活性化されるかである。リチウムはナトリウムより小さく求電子性が高いので、カルボニルにより強く配位する。Mg、Al、Znなど+2以上の電荷を取れるカチオンもNa+より強くカルボニル基を活性化する。 2つめは中心金属が還元剤の強さに与える影響である。アルミニウムはホウ素より大きいのでヒドリドとの結合はホウ素より弱い。このため求核攻撃をしやすく、ボロンヒドリドより還元力が強い。3番目のファクターとして置換ヒドリドにおける立体効果がある。置換基のあるヒドリドはそうでない金属ヒドリドに比べ求核性が低い。例えばトリ酢酸水素化ホウ素ナトリウム(英語版)(NaBH(OAc)3)はケトンとは反応しないのでアルデヒドの選択的還元に使われる。 4つめは基質が還元剤に与える影響である。アセトキシ基は立体障害と電子求引性のためトリ酢酸水素化ホウ素ナトリウム (NaBH(OAc)3) による還元を阻害する。シアノ基も還元剤に対して立体障害が大きいが、水素化トリエチルホウ素リチウムなど電子供与基を持った還元剤を使うことで、望まない転位反応が起こることを避けることができる。 この基質効果により、NaBH3CNは通常のpH (>4) で還元作用が著しく低くなる。そのためこの化合物を使って還元的アミノ化を行う場合、下のように反応させるのが望ましい。 比較的弱い還元剤としてケトンをアルコールに還元する際は水素化ホウ素ナトリウムが一般的に用いられる。これはLAHなどは官能基許容性が低く、ニトロ基やニトリル、エステルなど様々な官能基を還元してしまうからである。またLAHと違いエタノールや水を溶媒として用いることができる点も特長である。LAHやDIBAL-H、L-セレクトリド(英語版)、ジボラン、ジアゼンや水素化アルミニウムなどの強い還元剤はアルデヒドとケトンの両方を還元することができるが、活性が高いため毒性も高い。しかし、カルボン酸やエステルをアルコールに還元する場合はこれらの強い還元剤が必要となる。 下の表はどのカルボニル官能基がどの還元剤で還元されるかを示している。ただしいくつかの試薬は反応条件に依存する。
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