重症糖尿病の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 04:17 UTC 版)
具体的には HbA1c > 8% である場合のアプローチを考える。この場合重症度には相当な幅があるため、まずはインスリンの適応に入るのかどうかを検討する。インスリンの適応がなければ経口血糖低下薬の出番である。HbA1c > 8%となるくらいの高血糖の場合は追加分泌障害も存在する可能性があるが基本的には基礎分泌が足りていないためSU薬は良い適応となる。SU薬を少量から開始し、血糖値の減少を見ながら徐々に増量していく。アマリールであったら1〜2 mg/day,オイグルカンであったら1.25〜2.5 mg/dayあたりから開始することが多い。効果不良例では最も薬効の強いSU剤であるオイグルカン5.0 mg(分1、分2問わない)あたりまで増加させるが、ここまでやって効果不良の場合SU剤の増量よりも多剤併用療法に切り替えた方がうまくいくことが多い。SU剤にて全く効果がない場合を一時無効といい、インスリンの適応となる。はじめは効果があったのに徐々に効果がなくなっていくことを二次無効という。原因としては食生活の乱れ、肥満の悪化、膵臓β細胞の疲弊(持続的な高血糖にさらされると膵臓β細胞の破壊が進行することが知られている)が考えられる。基本的には効果判定は食事、運動を踏まえた生活歴と体重、血糖値の2〜3か月の推移にて判断する。2次無効と判断した場合はまずは2剤併用療法を行う。問題点として肥満によるインスリン抵抗性の増大を考えるのならビグアナイド薬メルビンやチアゾリジン薬アクトス、インスリン初期分泌の障害が気になるのならαGI薬であるグルコバイといった具合に軽症糖尿病時と同様の考え方で2剤目を選ぶ。この状態で3ヶ月ほどで効果判定を行い、さらに効果不良であれば3剤併用療法となる。これでも効果不十分ならばいよいよインスリン導入ということとなる。インスリンの導入では皮下注射を自分で行えなければならない、血糖自己測定(SMBG)ができなければならない。シックディの対応、低血糖の対応といった問題が生じてくるので、この段階になる前に説明しておくことが望ましい。重要なことはインスリン治療を開始することで膵臓のインスリン分泌能が回復してきて、経口血糖降下薬すら不要になることがあること(一生インスリンを打ち続けなければならないということではない)、食事運動療法が上手くいっていなければ教育入院を機会に改善できる可能性があるということである。コントロール不良も食事、運動療法をせず高血糖持続で体重減少となるとかなりひどい状態が考えられる(こういった状態で食事、運動をしっかりやりましたと平気でいう患者もいる、定期的にフォローしている患者ならばおかしいことに気がつけるが、初診でたまたま来た患者がこのような状態であると判断できない)が、体重が増えて血糖値が高値というのはインスリン自体は分泌されているのでインスリン導入にて改善の見込みはある場合がある。設備のある病院ならばインスリン分泌能、インスリン抵抗性を客観的に測定するべきである。
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