遠方惑星に関する仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/22 14:00 UTC 版)
「プラネット・ナイン」の記事における「遠方惑星に関する仮説」の解説
1846年の海王星の発見以降、さらなる天体が海王星よりも遠方に存在するという数多くの理論的な予想がされてきた。これらの理論は、天王星と海王星の軌道に影響を及ぼす遠方の天体の存在を予測した。軌道への摂動のように間接的な手段によって海王星より遠方の天体を探そうという試みは、冥王星の発見以前にまで遡る。ジョージ・フォーブス (George Forbes) は1880年に海王星以遠の惑星の存在を初めて仮定しており、この研究は現在のプラネット・ナインの理論に類似していると考えられている。この仮説上の天体の一つは、軌道長半径が 100 au と地球の100倍の距離にあるとされ、二つ目は 300 au とされた。彼が提唱した天体は、周期彗星の遠日点距離の分布が偏っていることを説明するために導入したものであり、このような遠日点距離の偏りは例えば木星族彗星に見られる。1906年にパーシヴァル・ローウェルは海王星以遠の惑星を捜索する大規模なプロジェクトを開始した。彼はこれが天王星の軌道の問題を解決できると確信しており、この未知の惑星を Planet X と呼んだ。なお Planet X という名称は Gabriel Dallet によって過去に使われている。 2004年に発見されたセドナは特徴的な軌道を持っており、この天体は過去に既知の8個の惑星とは異なる重い天体との遭遇を起こしたのではないかという推論をもたらした。セドナの近日点距離は 76 au であり、これは海王星と重力的に相互作用を起こすには遠すぎる。様々な科学者によって、セドナが現在の軌道に至った仮説が提唱された。それは、遠方の軌道にある未知の天体との遭遇や、太陽が形成された散開星団の一員であった別の恒星との遭遇、あるいは後に太陽系近傍を通過したその他の恒星との遭遇である。2014年3月にはセドナを越えた近日点距離 (80 au) を持つセドノイドである2012 VP113と呼ばれる小惑星の発見が公表された。他にも似たような軌道を持つ小惑星が複数存在すると考えられており、これは未知のスーパー・アースサイズの天体が太陽系遠方に存在することが原因の可能性がある。 2008年には向井正率いるチームによって、多くの太陽系外縁天体が持つ大きな軌道離心率と軌道傾斜角は、軌道傾斜角20°、軌道長半径100 - 200 au、公転周期約1,000年の、火星から地球サイズの天体の影響による可能性があるという説を発表した。 2012年の学会において、ブラジル国立天文台(英語版)の Rodney Gomes 率いる研究チームは、非常に細長い軌道を持つ太陽系外縁天体の軌道を解析し、未知の天体が存在する可能性を実証するモデルを作成したことを発表した。またこの天体は大きな軌道長半径を持つケンタウルス族天体や、巨大惑星の軌道と交差する太陽系内の小天体の軌道も説明可能とされた。この仮説では、海王星質量の天体が非常に遠方 (1,500 au) の軌道離心率の大きい (e = 0.4)、軌道傾斜角が 40° 程度の軌道にいるとされた。あまりにも遠すぎるため内惑星にはほとんど影響を及ぼさないと考えられるが、周辺の小天体を散乱させるには十分な質量である。プラネット・ナインと同様にこの天体は 300 au を超える軌道長半径を持つ天体の近日点を振動させ、影響を受けた天体のうちあるものは巨大惑星と交差するような軌道に移り、またあるものはセドナのような分離した軌道に移る。この研究は2015年に論文として出版された。Gomes は太陽系の遠方に未知の惑星が存在する可能性があることを確かめたが、このような天体の発見には至らなかった。
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