軍隊と警察・消防
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/04 19:22 UTC 版)
近代になるまで警察組織が存在しなかった国も多く、イギリスやフランスでも本格的な警察組織が出来たのは近代になってからであり、中世時代末期まで現代の警察が行っている治安維持は軍の重要な仕事であった。このため軍隊と警察は多くの点で特徴を共有している。その例は国家憲兵制度にもみられる。 警察は実力を以って法を執行し、その抑止的な能力によって秩序を維持する組織であり、その観点から軍隊と機能が一見類似している。しかしながら本質的には意義、権限、権限付与の単位、活動地域、基本的属性などが異なっている。警察の機能は国内法に基づいて犯罪の防止と法の執行を行い、部分的な治安維持を担うが、一方で軍隊の機能は国際政治において国家主権の象徴であり、必要時には武力を行使する組織である。軍隊は国防省などの管理のもと国家の自衛権を担う機関であり、警察は内務省の下におかれる行政機関である。 さらに警察は国内法により権限が与えられているが、軍隊に与えられている権限は国際法によるものであり、国際法の主権絶対の原則や主権平等の原則に基づいた原則的無制限の権限である。現代の戦時国際法による制約はあるものの、それらは無制限の原則に基づいた規則であって権限の原則を規定しているわけではない。権限付与の単位として、警察では一人の警察官にまで権限が付与されているが、軍隊の権限は部隊行動を前提としており、個人の兵士一人ひとりに付与された権限ではない。活動領域についても警察力の行使は国内に厳格に限定されているが、軍事力の行使が可能な領域は国内に限定されない。警察力が外国で行使された場合は国際法では主権侵害であり、軍事力であればそれは戦争である。またそもそも警察の身分は基本的に文民であり、軍人ではないために戦時国際法における軍人として扱われることはない。ただし警察組織も非常に国によって多様性があり、より重武装な威力警察や準軍事組織などがある。 現代でも総人口や国家機関の人員が少ない小国の場合には軍と警察の組織が明確に分離していないことも多い。例えば、総人口が約10万人に対して軍の総兵力が518人しかいないトンガ軍の場合などは軍人の過半数が普段は警察官としての業務を行っており、軍と警察の組織が明確に分離していない。 複数の行政機関を設置するだけの経済的、人的リソースの無い小国では消防・警察の業務を軍が代行することが多い。
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