車両渡船沈没の原因と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/01 06:38 UTC 版)
「石狩丸 (初代)」の記事における「車両渡船沈没の原因と対策」の解説
洞爺丸台風当夜の函館湾の波の高さは6m、波周期9秒、波長約120mと推定され、当時の青函連絡船の水線長115.5mより僅かに長く、このような条件下では、たとえ船首を風上に向けていても、前方から来た波に船首が持ち上げられた縦揺れ状態のとき、下がった船尾は波の谷間の向こう側の波の斜面に深く突っ込んでしまい、その勢いで海水が車両甲板船尾の一段低くなったエプロン上にまくれ込んで車両甲板上に流入、船尾が上がると、その海水は船首方向へ流れ込み、次に船尾が下がっても、この海水は前回と同様のメカニズムで船尾から流入する海水と衝突して流出できず、やがて車両甲板上に海水が滞留してしまうことが事故後の模型実験で判明した。 その滞留量は、十勝丸模型による水槽実験では、貨車満載状態で、停泊中であれば、波高6m、波周期9秒で400トンに達し、波高7m、波周期9秒では転覆した。また、波周期が9秒より短くても長くても、車両甲板への海水流入量は急激に減少することも判明した。これらより、車両甲板全幅が車両格納所となっている車両渡船では、車両甲板上に滞留した海水が傾いた側の舷側まですばやく流れるため、貨車満載状態で停泊中であれば、波周期9秒、波高6mが転覆するか否かの臨界点で、波高6.5mでは海水滞留だけで転覆してしまうとされた。さらに、石炭焚き蒸気船では、石炭積込口など、車両甲板から機関室(機械室・ボイラー室)への開口部が多数あり、これらの閉鎖が不完全で、滞留した海水が機関室へ流入して機関停止し、操船不能となったことも沈没の要因とされた。 これらの浸水に対しては、車両甲板面の機関室への開口部の水密性を確保のうえ、車両甲板船尾舷側外板下部に多数の放水口を設置して、車両甲板上に流入した海水を迅速に船外へ流出させることで、船尾扉なしでも十分安全なことが模型実験で明らかとなった。このため洞爺丸事件後急遽建造され、1955年(昭和30年)9月に竣工した車両渡船檜山丸ではこの方式が採用され、十勝丸もこの方式で修復工事が進められた。
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車両渡船沈没の原因と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 01:56 UTC 版)
洞爺丸台風来襲当夜の函館湾の波は、高さ6m、波周期9秒、波長約120mと推定され、当時の青函連絡船の水線長115.5mより僅かに長く、このような条件下では、たとえ船首を風上に向けていても、縦揺れにより船尾を勢いよく波の中に突っ込んだとき、その勢いで海水が車両甲板船尾のエプロン上にまくれ込んで車両甲板上に流入し、船尾が上がると、その海水は船首方向へ流れ込み、次に船尾が下がっても、この海水は前回と同様のメカニズムで船尾から流入する海水と衝突して流出できず、やがて車両甲板上に海水が滞留してしまうことが事故後の模型実験で判明した。 その量は、車両甲板全幅が車両格納所となっている北見丸・日高丸(初代)と準同型の十勝丸(初代)の模型での実験では、貨車満載状態で、停泊中であれば、波高6m、波周期9秒で400トンに達し、波高7m、波周期9秒では転覆した。また檜山丸型の放水口省略タイプの模型実験では、波高6m、波周期9秒で900トンに達した。いずれの場合も波周期が9秒より短くても長くても、車両甲板への海水流入量は急激に減少することも判明した。これらより、車両甲板全幅が車両格納所となっている車両渡船では、車両甲板上に滞留した海水は自由水として傾いた側の舷側まですばやく流れるため、貨車満載状態で停泊中であれば、波周期9秒、波高6mが転覆するか否かの臨界点で、波高6.5mでは海水滞留だけで転覆してしまうとされた。さらに、石炭焚き蒸気船では、車両甲板から機関室(機械室・ボイラー室)への開口部が多数あり、滞留した海水が機関室へ流入して機関停止し、操船不能となったことも沈没の要因とされた。 これらの浸水への対策として、車両甲板面機関室開口部の水密性が確保されている限り、車両甲板船尾側面への多数の放水口設置で、車両甲板上に流入した海水を迅速に船外へ流出させることができ、船尾扉なしでも安全性の確保されることが明らかとなった。このため洞爺丸台風後、急遽建造に着手され、1955年(昭和30年)9月に竣工した車両渡船檜山丸(初代)で初めてこの方式が採用され、日高丸(初代)もこの方式で修復工事が進められた。
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