超巨大地震の多様性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 04:31 UTC 版)
井出哲 (2011) は東北地方太平洋沖地震の地震波の解析から海溝側のプレート境界浅部と陸側のプレート境界深部との間で断層破壊が往復する形で進行し、海溝側の過剰滑りであるダイナミックオーバーシュートが大津波を励起したと推定している。 古村孝志 (2012) は、2011年東北地方太平洋沖地震において海溝軸付近で超大滑りが認められ巨大津波を誘発したことから、沈み込み帯の陸側深部の断層破壊に加えて、海溝軸付近が震源域となる事により地震が巨大化するとした。南海トラフでも同様の事が起こるとされ、宝永地震の震源域に加えて海溝軸付近が震源域とも推定される慶長地震の震源域が同時に断層破壊して巨大津波が発生するとされた。しかし、南海トラフはSingle Segmentationであり、宝永地震単独でも海溝軸付近まで断層破壊が及んでいる可能性があり、Double Segmentationとなる証拠は見出されないとされる。 小山順二 (2013) らは東北地方太平洋沖地震発生を期に超巨大地震の発生場には二つの異なった特徴があることを突き止め、宝永地震と東北地方太平洋沖地震は異なる震源過程で発生したと推定しそれぞれ「Along-strike Single Segmentation (ASSS)」および「Along-dip Double Segmentation (ADDS)」と分類した。従来チリ型とされた低角の若いプレートの沈み込み帯がASSSに相当し、超巨大地震の発生には多様性が認められるとした。 カスケード地震を起こしたカスケード沈み込み帯や、宝永地震を起こした南海トラフは現在地震空白域を形成しプレート間が強く固着していると推定されるが、東北地方太平洋沖地震を起こした日本海溝や、アラスカ地震の震源域では明白な地震空白域が見られない等の特徴が見られる。 タイプ1:Along-strike Single Segmentation (ASSS) プレート間の強い固着域が海溝軸から沈み込み帯全域に拡がっており、本震前に明白な地震空白域を形成している。 本震では横並びのセグメントが連動して破壊し地震活動帯が細長く、断層の幅と長さの比が1:5程度である。 地震モーメントの放出はパルス的でなく、長時間にわたって継続する。 表面波であるレイリー波やラブ波の振幅は観測点が断層破壊方向と反対側にある場合、偶数番の優弧を回ったものが、伝播距離の短い劣弧を回った奇数番のものより大きく、断層破壊が進展する方向に地震波のエネルギーが集中するため方位依存性が著しい。 例:1700年カスケード地震、1707年宝永地震、1960年チリ地震、2010年チリ・マウレ地震等 タイプ2:Along-dip Double Segmentation (ADDS) プレート間の強い固着域は海溝軸近くのセグメントに限定され、本震前には明白な地震空白域が見られず島弧沿いに顕著な地震活動がある。 本震では陸側と海溝側の二重に配列したセグメントが連動して破壊し地震活動帯が幅広く、断層の幅と長さの比が1:2 - 3程度である。 断層破壊初期に狭い範囲で超大すべりが発生し、地震モーメントの放出がパルス的である。 表面波であるレイリー波やラブ波の振幅は、偶数番と奇数番で差が認められず、方位依存性が見られない。 例:1952年カムチャッカ地震、1964年アラスカ地震、2011年東北地方太平洋沖地震等 2004年スマトラ沖地震は、初期破壊過程においてADDS的な性格を帯びるが、アンダマン諸島付近ではASSS的な性質であるという。
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