貨幣のデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 10:19 UTC 版)
硬貨のデザインは地域によって大きく異なる。ヨーロッパの硬貨は権力者の肖像などの図像を入れているが、中国や日本では銭(ぜに)と呼ばれる中心に穴の空いた硬貨を作った。銭は円形方孔といって穴が四角く、これは古代の宇宙観である天円地方の思想にもとづいている。この穴は、鋳造後にバリを削るときの道具を通すために使ったほか、紐を通して大量の枚数をまとめるのにも活用され、小額面の貨幣を運ぶには便利だった。一方、硬貨に穴がないヨーロッパでは運ぶための財布が発達したとも言われ、アテナイでは一般市民は財布を持たず、小額の硬貨は口に入れて運んだという記録もある。イスラーム世界の硬貨は、偶像崇拝を避けるために文字や図柄だけを刻印した。 紙幣は、最初の紙幣とされる宋の交子をはじめとして中国や日本では縦長であった。これは文字が縦書きであったことに由来する。ヨーロッパの初期の紙幣は北欧を中心に縦長であり、オーストリア・ハンガリー、ロシア帝国、ポーランド、ブルガリアなどでは19世紀や20世紀まで縦長の紙幣が時折発行されていた。正方形の紙幣としては、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーなどがある。現在では横長の紙幣が一般的となっている。 貨幣のデザインは発行された時代の芸術とも関連がある。19世紀末から20世紀前半にかけてはアール・ヌーヴォーやアール・デコ様式の紙幣がオーストリア・ハンガリー、ドイツ、フランス、ポーランドなどで発行された。オーストリア・ハンガリーでは、1881年発行の5グルデン札のデザインをグスタフ・クリムトが指導している。1945年に日本の新紙幣のデザインを公募した際には、審査員には藤田嗣治や杉浦非水が参加した。 ヨーロッパの硬貨、テトラドラクマ銀貨。アレクサンダー3世の肖像入り。 中国の唐代の硬貨、開元通宝。初鋳621年 イスラーム世界の硬貨、アシュラフィー金貨。
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