譲渡制限特約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 14:10 UTC 版)
当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない(466条2項)。 後述するように2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では譲渡制限特約について悪意・重過失の譲受人に対する債権譲渡も譲渡自体は有効とし、債務者の利益保護のため、債務者は悪意・重過失の譲受人に対しては履行を拒み、かつ、譲渡人に対する履行を譲受人に対抗できるとされた(466条3項)。 譲渡制限特約2017年の改正前の旧466条2項は「当事者が反対の意思を表示した場合」となっており、従前は「譲渡禁止特約」と呼ばれていた。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)466条2項では、譲渡の禁止のほか完全な譲渡の禁止ではない制限も規定されており、まとめて「譲渡制限特約」と呼ばれる。 物権的効力の否定2017年の改正前の旧466条2項は債権者と債務者の間に譲渡禁止特約がある場合、債権譲渡は効力を生じないとされ(旧466条2項本文)、ただし、譲渡禁止特約を対抗できるのは悪意又は重過失の譲受人に対してだけであって、善意(軽過失ある場合を含む)の譲受人に対しては譲渡禁止特約を対抗できないとなっていた(同項ただし書)。この譲渡禁止特約の効果は当事者の間でも第三者との関係においても債権譲渡の効力を否定する物権的効力であるとされ、判例も、債権譲渡自体が効力を生じないという解釈に立っているとされていた(物権的効力説)。しかし、契約には原則として第三者に対する効力はなく、債権譲渡による資金調達の支障になっているとの指摘があった。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では一般の債権に関する規律と預貯金債権に関する規律を分け、一般の債権に関する規律については、譲渡制限特約に反する債権譲渡もその効力を妨げられないとされた(466条2項)。なお、債権者には譲渡制限特約の契約違反となるが契約解除・損害賠償請求の可否は解釈によるとされている。 譲渡制限特約付の債権が譲渡された場合、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる(466条3項)。譲受人の譲渡制限特約の悪意・重過失の立証責任は債務者が負う。 2017年の改正前は、譲渡禁止特約を対抗できるのは悪意又は重過失の譲受人に対してだけであって、善意(軽過失ある場合を含む)の譲受人に対しては譲渡禁止特約を対抗できないとされていた(旧466条2項ただし書)。しかし、債務者の保護に譲渡の効力を否定する必要はなく、弁済の相手方を固定すれば債務者の保護は図られるとの指摘がなされた。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では譲渡制限特約について悪意・重過失の譲受人に対する債権譲渡も譲渡自体は有効とし、債務者の利益保護のため、債務者は悪意・重過失の譲受人に対しては履行を拒み、かつ、譲渡人に対する履行を譲受人に対抗できるとされた(466条3項)。 なお、譲渡制限特約について悪意・重過失の譲受人に対する債権譲渡の場合、債務者が466条3項による履行の拒絶等により譲受人にも譲渡人にも弁済しないと、譲受人は債権の回収が困難となるため譲受人にその事態を解消するための催告権が与えられている。この場合、譲受人は相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をすることができ、その期間内に履行がないときは、その債務者は履行の拒絶等が認められなくなる(466条4項)。
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