請求棄却と異議申立て
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 16:20 UTC 版)
「弘前大教授夫人殺し事件」の記事における「請求棄却と異議申立て」の解説
再審請求からおよそ3年が経過した1974年(昭和49年)6月、弁護側は高裁に最終意見書を提出した。その中で弁護側は、現場検証でXが未知の井戸の存在を指摘したことは秘密の暴露にあたると主張し、Xの犯人性を強調した。さらに、過去の裁判での事実認定の変遷、那須の名前入りの不自然な実況見分調書(注参照)、逮捕後の長期拘束、2人の再鑑定人の主張、そして那須が仮釈放すら辞退して25年間無実を主張していることを補強材料とした。その翌月に提出された検察側最終意見書では、Xの告白が確定記録と一致したとしてもその信憑性は高まらない、とされた。 約半年後の12月13日、仙台高裁刑事第一部は再審請求を棄却した。那須は落胆を隠さずに「もう日本の司法は何も信用できない」と繰り返したが、250ページに及ぶ決定理由書は、南出も認めるほどの綿密な審理を伝えていた。 棄却決定はその理由の中で、Xの告白の特に廊下の幅についての部分が「裁判記録や第三者では知り得ないことで信憑性がきわめて高い」としたが、Xが事件当時現場近くに住んでいたことを考えれば秘密の暴露とは言い切れない、とした。ズック靴の血痕については「付着を証明するものは皆無」とし、那須の「変態的性格」についてもはっきりと否定された。しかし白シャツの血痕鑑定については、白シャツにSのものと完全に一致する血液が付着しており、那須の側はそれに対する反証を持っていない、という古畑鑑定を全面的に受け入れた判断となった。結局、結論としては「有罪判決は疑わしいが、無罪を証明する明白性を欠く」というものに終わった。主文の最後で、決定は通常3日間である異議申立て期限をさらに3日間延長した。 これを受けて12月19日、弁護側は仙台高裁刑事第二部へ異議申立てを行った。だが老齢の南出は「日本の再審制度は無きに等しい」と嘆き、悲嘆のあまり新たな弁護を引き受けなくなった。
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