行動の基準に関する定め
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 23:18 UTC 版)
通達として最も一般的に発翰されるものであり、実質的な行政立法として機能してきたものである。具体的な内容・分類は、種々の学説あって一定しないが(そもそも発翰する行政機関自体が明確な分類観念を持っていないことが、この問題をややこしくしている。)、本項においては便宜的に、法令の解釈や適用の基準を示した「解釈通達」」、法令の規定を適用する際の取扱の基準である「取扱通達」、行政における執行手続きを定めた「執行通達」に3分する。 例えば「高齢者に給付金を与える。」という法令が仮にあったとすると、「高齢者とは65歳以上の者である。」という法解釈の考え方を示すのが解釈通達であり、「給付金の申請手続きの際は住民票を提出させろ。」という具体的な運用の手順・基準を示すのが取扱通達であり、「今年度中に給付金の支給を終えろ。」という法執行の方針・内容を指示するのが執行通達である。 解釈通達のさらに具体的な内容としては、法令の不確定概念を明確にする「補充通達」、解釈を統一を図るために確認的に解釈を示す「留意通達」、法令の定める要件よりも緩い要件を定める「緩和通達」がある。 補充通達は実務の便宜上、特定の法令事務に関しての解釈を網羅した包括的な通達が発出されることも多い。税務部局においては「基本通達」という名称が用いられる。労働基準法の分野では、昭和時代の内簡で示された個別解釈を集成して1個の通達とした「労働基準法解釈例規」という包括的通達がある。また、個別の法令について「××法令の施行について」「××法令の運用について」といった包括的通達が発せられることがある。 留意通達は、他法令との関係による解釈、発翰者の見解と相違する運用が行われる可能性がある事項についての注意喚起などがある。 緩和通達は「目こぼし通達」とも呼ばれ、通達行政に関わる問題としてしばしば議論となる。例えば昭和45年7月1日国税庁長官通達「所得税基本通達の制定について」36-30は、労働者が永年勤続表彰として会社から受け取った記念品には所得税が課税されないことを定めているが、単に「税務署の恣意によって」課税しなくてもよいとしているものである。このような緩和規定が存在するのは、法令を完全に遺漏なく執行することは困難であるため、限られた行政資源の運用の中で積極的に法を執行するに値しない事項については、最初から執行しないとの統一方針を定めておいた方がよいとの考え方による。しかし、非課税の範囲は本来所得税法第9条に規定されているもので、非課税所得の範囲を拡大するには、立法府の議を経て法の改正によるべきものである。行政機関内だけで作成された文書により法の規定を超えて非課税の範囲が拡大することは、立法府の定めた法令が行政府により勝手に改正されたのと実質的に同様の効果が生じる。 執行通達は、執行の方針を定めたもの、個別の事項の執行を命じたもののほか、既存法令が十分に遵守されていないとみなされた場合に遵守徹底を命じる「お説教」通達の場合もある。
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