虎と狐への信仰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 20:52 UTC 版)
唐代の説話に残る怪談に出てくる代表的な獣が虎と狐である。 虎は、農村部では身近にいる人間を食べる危険な猛獣として怖れられ、旅人や農民が襲われ、人々と敵対する事例が多数あった。 酉陽雑俎によると、『虎が交尾すると月に暈がかかる。虎が人間を殺すと、死体を立ち上がらせ衣を解かせてから食べる、夜、見る時、一つの目から光を放ち、もう一つの目でものを見る』とされる。 また、別説では四つ指を「天虎」、五つ指を「人虎」と呼ぶという。 唐代の説話では、中島敦の小説『山月記』のモデルになった李徴のように、人が突如、変身して、心身ともに虎に化すもの。虎の皮を着て虎に変身してしまうもの。「倀鬼」という食した人間の霊を家来として虎が操るもの。人が虎の皮を着て虎として使命を果たしているというもの、さらに虎に襲われた話や、虎狩りの話など多様の説話が残されている。 総じて、虎と人との精神の違いの表現、虎の皮に大きな意味を持たせていることが多く、虎は、神秘的で霊的な生き物として畏敬を払われていた。 狐は、古来より強い力のある霊獣とされ、人に変化し、千里の外を知り、蠱魅で人の知覚を失わせ、千年生きれば「天狐」となるとされてきた。初唐では、農村では狐の信仰が盛んで、家屋で祭って祈り、飲食物を人間と同じものを与え、『狐魅がなくては村は成り立たぬ』という諺があり、民間信仰では天狐が特に重視されていた。 酉陽雑俎によると、狐は紫狐と呼ばれ、夜、尾をたたくと火を出す。髑髏を頭に乗せて北斗に礼をして、髑髏が頭から落ちなければ、人間に変身する。天狐は、九尾、金色で陰陽に透徹するとされる。 唐代の説話では、天狐は大きな力を持ち、人を狐媚で操り、並の道士や神よりはるかに強いが、力の強い道士や仙人、神には劣るとされることが多い。また、人間に積極的に害をなすよりも、人に化け、人間に婚姻を求めたり、婚姻を結んだ人間を援助を行う傾向にある。天狐は民間信仰の神と妖怪の境界にいた存在とされる。
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