薬剤学の諸分野
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/28 08:49 UTC 版)
薬剤学はその対象により製剤学、物理薬剤学(製剤学のための物理化学的な基礎であり、製剤学の一分野とされることもある)、生物薬剤学(薬物動態学を含む)、調剤学に大別される。しかし、実務に密接に関連している事項を含み、また、日本における研究者が少ないためか、分野としての呼称が確立しておらず、同義語が多く、混乱がみられることもある。「臨床」が語頭に付くこともよくある。 薬物が患者に投与された後、その薬物とそれに由来する物質の体内の各部における濃度と時間による変化そして、体外への排出経路、排出量と時間による変化をとくに薬物体内動態、単に体内動態、または薬物動態と呼ぶ。薬物の体内動態の記述、説明、予測、制御について研究する薬剤学の一分野が薬物体内動態学または薬物動態学である。 体内動態を一般的なモデルで説明して、それを予測する上で、特に重要とされているものが、体の生理機能と薬物が起こす4つの現象であり、摂取した薬物が、体内へ入る現象(吸収:absorption)、薬物が体内の各組織に移行する現象(分布:distribution)、代謝酵素によって、薬物が別の物質(通常は生理活性を持たないと仮定される)に変換される現象(代謝:metabolism)、尿などを介して体外に放出される現象(排泄:excretion)である。これらの頭文字をとり、4つの現象をADMEと総称することがある。 生物薬剤学 薬剤を生物的な側面から研究する薬剤学の一分野という意味であるが、薬物動態学とほぼ同じものを指すか、それを内包する。 物理薬剤学 薬剤を物理化学的な側面から研究する薬剤学の一分野である。薬剤の品質の向上、維持、または適切な体内動態を示すような薬剤の設計、製造に寄与する物理化学的な知識を扱う。 製剤学 薬剤を製造する方法を研究する薬剤学の一分野であるが、薬学の教育科目として捉えるなら、主として日本薬局方の製剤総則の規定の理解が実質的な内容となっている。しかし、薬剤の製造を行う上で、重要な分野である。 調剤学 薬剤師の実務について研究する薬剤学の一分野である。薬剤の取り扱いや保存だけでなく、処方箋の理解と監査、薬剤についての情報の取り扱い、患者への服薬指導を含む。臨床調剤学、臨床薬剤学と呼ぶこともある。
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