著名な反例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 22:06 UTC 版)
「塹壕の中に無神論者はいない」の記事における「著名な反例」の解説
殿堂入りした野球選手であり戦闘機パイロットでもあったテッド・ウィリアムズの死とそれに続く遺体の冷凍保存を報じたニュースにおいて、かつてのチームメイトであるジョニー・ペスキーは、ウィリアムズが無神論者だったと述べている。リチャード・ティルマンは、NFL のアメフト選手であり兵士でもあった兄弟のパット・ティルマンへ弔辞を捧げるにあたり、「彼は信仰に篤くはなかった」と述べた。彼が無神論者であることは彼の生涯を描いたドキュメンタリー番組で論じられた。マウント・ソルダッド十字架訴訟(英語版)のいくつかの裁判で原告となったフィリップ・ポールスンは、無神論者のベトナム従軍兵士である。 『運命を分けたザイル』の著者であるジョー・シンプソンは、殆ど命懸けだったシウラ・グランデ峰(英語版)への登攀の映画化においてこの格言を述べている。深いクレバスの底に、脱水し、孤独に、脚を骨折して横たわった時について、彼はこう語った。 私は自分が一人きりであり、誰も助けに来ないことを完全に確信した。私は敬虔なカトリックとして育てられたが、神への信仰を止めて久しかった。もし私が本当に混乱状態になったら、その重圧の下で果たして私は改心し、アヴェ・マリアを二・三回唱えて「ここからお救いください」と言うのだろうか、と常々考えていた。結局、そういう気には一度もならなかった。つまるところ、私は神を全く信じておらず、死ぬときにはただ死ぬ、つまり死後の世界は無いと、心から考えているということだった。 無神論者の団体のいくつかは、このフレーズに異議を唱えている。信教からの自由連盟(英語版)は、この格言への異議を訴えるため「塹壕の中の無神論者」というモニュメントを建てている。「無神論と自由思想の軍人協会」(Military Association of Atheists & Freethinkers) は、元々このフレーズはいわゆる格言であり事実ではないということを強調するため、「塹壕の中の無神論者」を標語に掲げている。この協会の200人以上の会員は、陸海空軍に無神論者が居ることを示すため、軍で働いていることを公にしている。米軍の軍人らの宗教的信念は、米国の人口全体のそれと似通っているが、研究によると軍人はわずかに信仰心がより薄いと示唆されている。アメリカ国防総省の人員構成でみると、宗教的に無神論者なのは 0.55% もしくは 1% 未満で、不可知論者(0.12%)、ヒンドゥー教徒(0.07%)、仏教徒(0.38%)、イスラム教徒(0.24%)、ユダヤ教徒(0.33%)といった非キリスト教徒より多かった。ジェイムズ・モロウの「『塹壕の中に無神論者はいない』は無神論者ではなく塹壕にまつわる議論である」という言葉はよく知られているが、それは極限の恐怖に怯え絶望した人間の精神状態や判断が、落ち着いた状態にいる人間のそれ「以上に」合理的とはおよそ考えられないということである。
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