縁起本とは? わかりやすく解説

縁起本

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:55 UTC 版)

西遊記の成立史」の記事における「縁起本」の解説

龍谷大学図書館蔵書に『玄奘三蔵渡天由来縁起』(以下『縁起』)と題する写本一冊がある。これは西遊記物語日本語翻訳梗概訳)したもので、浄土真宗説教用いられたものである上巻のみが残っており、世徳堂本第46回当の部分上巻終っている(下巻は元々無く未完だった可能性もある)。いつ書写されたのかは全く不明であるが、太田辰夫その内容から、この写本翻訳元とした『西遊記』は世徳堂本より以前成立した原本であった可能性があると指摘し中野美代子もそれを支持している(本項では想定される翻訳元を「縁起本」と称する)。 『縁起』の最大特徴は、元本西遊記時代から冒頭置かれていたとおぼしき孫悟空大鬧天宮の話がなく、いきなり玄奘三蔵生い立ちから始まる点である。すなわち主人公悟空ではなく三蔵見なしていることになる。その後太宗入冥悟空八戒悟浄収服などの流れ概ね『西遊記』と同じであり、車遅国の段で上巻終了する。ただし烏巣禅師から心経授かる話(世徳堂本では第19回)が観音から金箍呪を授かった話(同第14回)とセットとなり、八戒収服より前に来ている。これは似た話が未分化のままであった原本内容反映している可能性があるという(類似の話離れた別々の回に分けて水増しすることは、通俗小説はしばしば行われる。後述)。また『縁起』では人参果(世徳堂本第24-26回)の話の後に、世徳堂本見えない逸話三蔵一行蛇蝎焼かれる)があり、これは世徳堂本第16回の老和尚放火類似するが、話が稚拙である。烏国の段(獅子怪が国王殺し、偽の王になりすましていたのを悟空らに退治される)では世徳堂本井戸の中から国王屍体発掘して蘇生させ、偽王対面させるという巧妙なとなっているのに対し、『縁起』では獅子怪を討ったのち国王は甦らず、単純な筋で終了するなど、話の運びがこなれていない太田は、これらの内容は世徳堂本より古く文学的技巧施されていなかった縁起本によったためとしている。

※この「縁起本」の解説は、「西遊記の成立史」の解説の一部です。
「縁起本」を含む「西遊記の成立史」の記事については、「西遊記の成立史」の概要を参照ください。

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