終末・破滅のテーマの起源
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「終末もの」の記事における「終末・破滅のテーマの起源」の解説
現代の終末ものフィクションの起源は、古代の黙示的文学にその起源を見ることができる。世界各地の神話や宗教には世界や人間社会の終わりを描写したもの、予言したものが多く存在する。 例えばユダ王国では、バビロン捕囚後に災厄や終末への志向があらわれ、預言者たちによる黙示文学にも終末に関する預言が登場した(特にダニエル書)。キリスト教が生まれる前後のローマ帝国のユダヤ属州においても、ローマ人に抑圧されるユダヤ人の間では終末に関する教えは関心が高く、キリスト教の勃興や教えにも影響を与えており、福音書の中ではイエス・キリスト自身も終末について述べている。 キリスト教がローマ帝国に広がった後も、キリスト教徒の間では、世の終わりの時にイエスが再臨するという思想が信仰の中枢にとどまり続けた。ローマ帝国後期の信仰や終末論は、キリスト教の終末論の形成に大きな影響を与えている。ローマ帝国後期にはさまざまな黙示的文学が登場するが、その中でもヨハネの黙示録は新約聖書に採り入れられたため今日でもよく知られており、西洋文明のなかの終末テーマの作品のほぼすべてに何らかの影響を与えている。当時書かれた黙示文学にはほかにも、ペトロの黙示録をはじめとする新約聖書に納められなかった外典の黙示録や、グノーシス主義の黙示録などがあり、ペトロの黙示録がダンテの『神曲』に影響を与えたように、聖書から除かれてもなお西洋社会に影響を与え続けた。 中世以降も、7世紀の『偽メトディウスの黙示録』(Apocalypse of Pseudo-Methodius)などのような黙示録的文学が書かれ、ユダヤ教やキリスト教の終末論をもとにイスラム教も新たな終末論を構築した。終末までのすべての教皇について書かれているとされる『聖マラキの預言』のようなものも登場しているが、これは中世ではなく16世紀の偽書とみなされている。13世紀には医者・科学者であり哲学者でもあったイブン・アン=ナフィース(Ibn al-Nafis)がアラビア語で小説『Theologus Autodidactus』を著しているが、経験主義的科学を用いてイスラム終末論を説明したこの書が近代科学以前の最初のサイエンス・フィクションであり最初の破滅テーマのフィクションとも考えられている。 また旧約聖書創世記のノアとノアの方舟の物語は、古代世界に広く見られる「大洪水」神話の一つであり、腐敗した文明が大洪水で破滅する様や、新しい文明が破滅後に再建されるという希望を描いている。
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