精子形成障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 09:06 UTC 版)
「無精子症」も参照 精子を造る能力自体が低いか全くないもの。男性不妊全体の90%以上を占める。原因が不明なものも多く、50% - 60%は原因が不明な「特発性造精機能障害」と分類される。造精機能が損なわれている場合、精祖細胞が全く見られない場合、精子の発育が途中で止まる場合、あるいは極端に量または質に問題がある場合が考えられる。また、造精は精巣が単独で行うものではなく、視床下部、下垂体、精巣が協調して行われるものであり、先天的、後天的を問わず各種細胞間伝達物質の調整がうまくいかない際にも発症する。具体的なケースとしては、視床下部下垂体疾患による性腺刺激ホルモン欠損症などが挙げられる。 典型的には精索静脈瘤による精巣の温度上昇など、ヒトの精子は熱に弱く、これが不妊の原因となる場合が見られ、精索静脈瘤だけで全体の25% - 30%以上を占める。 その他温度に起因するものとしては停留精巣が多くみられる。また、40度以上の高熱を一週間以上患った場合も危険で、特に成人してからの流行性耳下腺炎(おたふく風邪)は20%以上の確率で精巣炎を発症し、両方の精巣に及んだ場合には無精子症などに至る場合がある。また、精巣そのもののみならず、副性器の炎症が原因となっているケースも見られる。なお、外傷や精巣炎などにより二つある精巣の内の一つを物理的もしくは機能的に損した場合、残された精巣の機能も低下してしまう場合がある。また、精巣に腫瘍がみられる場合にも本障害が見られる。 その他の原因としてクラインフェルター症候群も比較的多く見られる。また、各種抗がん剤に代表される薬剤、放射線への被曝、及びダイオキシンや各種環境ホルモン等、また、活性酸素の関与の可能性、が考えられている。 なお、世界保健機関によれば、正常な精液とは精液量2.0ml以上、pH7.2 - 7.8、精子濃度20.0×106/ml以上、総精子数40.0×106/ml以上、精子運動率50%以上または高速に前進する精子が25%以上、正常形態率15%以上、精子生存率75%以上、白血球数1×106/ml以上、が正常値とされる。精液検査では以上の基準との比較のほか、液状化に要する時間、色などの外観、粘度などが検査される。精液の検査により乏精子症、精子無力症、奇形精子症、無精子症などの診断が可能である。 精子の採取は2日 - 7日の禁欲期間の後に医療機関で行い、その場で迅速に検査を行う事が好ましい。また、炎症や感染症が考えられる場合には精液を培養し、細菌を調べることもある。 精液そのものの検査のほかに、糖尿病や腎臓病などの疑いのための尿検査、ホルモン検査、後述する抗精子抗体の検査や陰嚢のエコー検査、触診なども行われ、さらに必要に応じて精密検査が行われる。
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