第2章:ディエス・イレ(怒りの日)
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「戦争レクイエム」の記事における「第2章:ディエス・イレ(怒りの日)」の解説
英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。 オーウェン「But I was Looking at the Permanent Stars」 英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。オーウェン「次の戦争(The Next War)」 英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。オーウェン「ソネット-われらの大砲の一つが使用されているのを見て-(Sonnet:On Seeding A Piece Of Our Artillery Brought Into Action)」 英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。オーウェン「むなしさ(Futility)」 約25分を要する長い楽章である。最後の審判を歌うラテン語の典礼文にオーウェンの詩が4篇挿入され、形式的に複雑な構成になっている。冒頭に金管群が奏でるファンファーレは、最後の審判を告げるラッパと軍隊のラッパの2つのイメージが重ねられており、この後に何度も登場する重要なモチーフである(以下「ラッパの動機」と呼ぶ。)。4分の7拍子で歌われる「怒りの日」の旋律は、グレゴリオ聖歌「怒りの日」には基づいていないが、使っている音の構成や音域にはやや類似している点がある。「ラッパの動機」と「怒りの日」の旋律が交互に演奏されながら盛り上がり、「奇異なるラッパ(Tuba mirum)」の部分では同時に演奏される。その後、次第に音楽はおさまり、「ラッパの動機」が木管楽器に移ると、オーウェンの詩の断片「だが私は恒星を見つめていた(But I was Looking at the Permanent Stars)」がバリトン独唱によって歌われる。ここで描かれるのは、川岸にある野営地の夜の情景、消燈ラッパが響く中で明日への不安を抱きつつ眠る少年兵の姿である。歌い出しの歌詞である「ラッパが歌った(Bugles Sang)」は、「ラッパの動機」と同じく上行する分散和音で歌われる。 音楽が一旦おさまるとソプラノ独唱が初めて登場し、合唱とともにラテン語で「世を裁くために記された記録が差し出され」と歌う。続くオーウェンの詩「次の戦争(The Next War)」では、テノール独唱とバリトン独唱が「戦場では、おれたちは全く親しげに「死」に向かって歩いていった。」と、戦場で日常茶飯事であった死を「楽しげに」歌う。 次の「慈しみ深いイエスよ、思い出したまえ」は女声合唱のみで歌われ、テンポが速くなる「呪われし者共を罰し」からは男声合唱に交替し、そのままオーウェンの詩「ソネット-われらの大砲の一つが使用されているのを見て-(Sonnet:On Seeding A Piece Of Our Artillery Brought Into Action)」につながる。室内オーケストラのティンパニによる五連符を伴ってバリトン独唱が f で歌い、その合いの手としてオーケストラのトランペットが「ラッパの動機」を奏でる。「神がお前(大砲のこと)を呪い給い・・・・・・」と激しく歌われるフレーズの頂点で「ラッパの動機」がオーケストラのティンパニ、バスドラム、ピアノのクレッシェンドを伴って盛り上がり「怒りの日」の再現になだれこむ。この後は次第にテンポを落とし、合唱を従えたソプラノ独唱による「涙の日(ラクリモサ)」に続く。ゆっくりとした美しい音楽だが、4分の7拍子のリズムが「怒りの日」から続いている。続けてオーウェンの詩「むなしさ(Futility)」がテノール独唱によってレチタティーヴォ風に歌われる。フランスの冬の戦場で、戦友の遺体を前に太陽の光がもはや彼を目覚めさせることがないことを嘆く。ここに「涙の日」の音楽がオーバーラップし、「こんなことになるために 土くれは大きくなったというのか。」と「涙にくれる その日こそ 灰の中よりよみがえる日」とが交互に歌われ、聴く者の心を打つ。第1章の末尾と同様に、無伴奏の合唱が「慈悲深きイエス、主よ、彼らに平安を与えたまえ。」と歌い、静かに「怒りの日」を締めくくる。
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