第1世代天体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/19 21:34 UTC 版)
宇宙の誕生(約138億年前)から最初に形成された天体はどのようなものだったかについて、21世紀に入りようやく知見が深まってきている。 これまでは最も遠い天体からの光を観測することでその当時の天体の姿を知ることができたが、宇宙マイクロ波背景放射が始まる宇宙の晴れ上がりの時代(宇宙誕生から約38万年後)から、最も遠い天体の形成(2014年現在の観測では、MACS0647-JDの観測から、約5億年前)までの間は、まだ観測ができていない。そこで、宇宙の大規模構造の観測(CfA赤方偏移サーベイ、 スローン・デジタル・スカイサーベイ、2dF銀河赤方偏移サーベイなど)とその成立過程のシミュレーションが先行して行われていたことから、併せて最初の天体の成立のシミュレーションも行われた。東京大学カプリ数物研、JPL、京都大学などがスーパーコンピューターを使った研究結果では、宇宙誕生から1億年後から3億年後までに輝きを放つ最初の星、すなわち”ファーストスター”が誕生したとしている。この成立過程は、まず6000万AUほど(約1000光年)のダークマターの銀河ハローが形成され、その中心の分子ガス雲に囲まれた領域に太陽質量の100分の1、密度は空気と水と中間程度の最初期の原始星が誕生し、周囲の豊富な物質を潤沢に取り込みながら最終的に太陽質量の40倍程度になったと報告している。第1世代の星々はこのようにして誕生し、それまで水素やヘリウムなどの軽い元素しかなかった宇宙に、星の内部の核融合反応によって、それよりも重い元素を生み出す機構が登場したことになる。 非常に遠い星の光学観測は困難を極める。加えてこのような非常に古い星は現在はほとんど残っていないかもしれない。しかし、星からのスペクトルの観測で、重い元素を含まない天体が見つかれば、それはこうした第1世代の星を含む可能性がある。2010年1月、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した131億光年にある銀河の中に第1世代天体を含む可能性が高いことが解析の結果わかり、2014年2月には、オーストラリアの天文学者が11年をかけて地球から6000光年の距離に鉄などの重い元素を含まない推定130億歳の古い星を発見したと報じられたなど近年発見が相次いでいる。 これらの第1世代天体がいつ生まれたかは、宇宙の再電離の時期を特定するための重要な情報を与える。
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