第1世代医薬品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 16:17 UTC 版)
mTORC1がラパマイシンの標的として発見されたことを考えると、ラパマイシンは最初に発見されたmTORC1阻害剤であるといえる。ラパマイシンは細胞質のFKBP12(英語版)に結合して足場分子として機能し、このタンパク質をmTORC1のFRBドメイン(FKBP12-rapamycin binding domain)にドッキングさせる。FKBP12-ラパマイシン複合体のFRBドメインへの結合はmTORC1を阻害するが、その機構は未解明である。ラパマイシンは一部の培養細胞株や組織、特にFKBP12を高レベルで、そしてFKBP51(英語版)を低レベルで発現している場合には、mTORC2(英語版)も阻害する。 ラパマイシン自体は水溶性や安定性が非常に高いわけではないため、こうした問題を克服したラパログ(rapalog)と呼ばれるラパマイシンアナログが開発されている。こうした薬剤は第1世代のmTOR阻害薬とみなされている。こうした阻害薬には、エベロリムスやテムシロリムスなどがある。親化合物であるラパマイシンと比較して、エベロリムスはmTORC1に対する選択性がより高く、mTORC2にはほとんど影響を与えない。エベロリムスによるmTORC1の阻害は、腫瘍血管を正常化し、腫瘍浸潤リンパ球(英語版)を増加させ、養子免疫療法(英語版)の効果を改善することが示されている。 シロリムス(ラパマイシンの医薬品としての名称)は、腎臓移植患者の拒絶反応の予防薬として1999年にFDAの承認を受けている。また2003年、将来的な心臓発作の防止のために動脈を広げるステントに塗布する薬剤として承認された。2007年からは、mTORC1阻害薬は腎細胞がんなどのがん治療薬として承認され始めた。2008年にはマントル細胞リンパ腫の治療薬として承認された。mTORC1阻害薬は膵臓がんの治療薬としても承認され、2010年には結節性硬化症の治療薬としても承認された。
※この「第1世代医薬品」の解説は、「mTORC1」の解説の一部です。
「第1世代医薬品」を含む「mTORC1」の記事については、「mTORC1」の概要を参照ください。
- 第1世代医薬品のページへのリンク