クエーサーと初期宇宙
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 06:27 UTC 版)
クエーサーは、ビッグバン後に宇宙の再電離が始まった時期についても手がかりを与えている。宇宙の再電離とは、冷えて安定な中性元素となった水素が、星からの高エネルギーを受けて再び電離水素となったことを指し、これが宇宙に最初に星が現れた時期と考えられている。中性水素にライマンα線より短い波長の光があたると、その光をすべて吸収して連続した吸収領域をもったスペクトルとして観測される。電離水素に高エネルギーの光があたっても吸収されない。遠い天体からのスペクトルの観測では、天体から地球までの宇宙空間にわずかに残る中性水素によって吸収され、所々に鋭い吸収線が密集するライマンαの森と呼ばれるスペクトルが観測される。このような機構はガン・ピーターソン効果(英語版)と呼ばれている。 このような効果が観測されるクエーサーは長く見つかっていなかったが、21世紀に入って z = 6 付近のクエーサーからガン・ピーターソン効果による吸収域が発見され、これは再電離前のクエーサーではないかと考えられた。これは時期にして128億年前に相当する。理論上は宇宙誕生から1億年後、観測結果からは遅くても10億年後には第1世代天体が誕生して放射を始め、宇宙の再電離が起きていたことを示唆している。 クエーサーのもう一つの興味深い特徴は、ヘリウムより重い元素を含むことが分かっていることである。このことは、ビッグバンの後、最初のクエーサーが生まれるまでの間に銀河が恒星(種族IIIの星)を大規模に生成する時期があったことを示唆している。
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