科学的調査とその結論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 14:05 UTC 版)
「トーロンマン」の記事における「科学的調査とその結論」の解説
遺体の下には、苔の薄い層があった。科学者によりこの苔が、初期鉄器時代にデンマークのピート・ボグに生えていたことが判明したため、遺体は鉄器時代初期、およそ2,000年前に沼地に置かれたものと思われる。続いて14C放射性炭素年代測定により、トーロンマンの髪の毛を調べて、彼がおよそ紀元前400年頃に死んだことが分かった。泥炭中の酸素や地表下の酸素欠乏のおかげで、遺体の軟部組織がよく保存された。 X線その他の検査により、トーロンマンは頭には損傷を受けていないことが分かった。心臓、肺、肝臓の保存状態も良好であった。それほど年寄りでもないが親知らずが成長していたことから、トーロンマンは20歳以上の年齢であることがはっきりした。シルケボーの博物館では、トーロンマンの年齢およそ40歳、身長は当時としても比較的低めの161cmと推測した。ボグに沈んでいる間に縮んだ可能性もある。 1950年の最初の検死報告によれば、トーロンマンの死因は地上での絞殺ではなく、吊るし首に遭って死んだのだという。ロープ跡があごの下や首の側面に残っていたが、本来あるべき首の後ろの結び目跡が残っていなかった。2002年の再検査でも、科学的調査により、最初の調査を補完する新たな証拠が見つかった。吊るし首の犠牲者によく見られる頸椎損傷はなかった。同様にX線撮影により、舌は損傷していないが、吊るし首の場合の特徴である舌の膨張が見られることが分かった。 胃と腸が調べられ、その内容物について検査が行われた。トーロンマンの最後の食事はオートミールのポリッジのようなものであった。材料の野菜や種子には、野生のものも栽培したものも含まれており、オオムギ、アマ、アマナズナ属、タデ属、荒い牧草、カモミールといったものが見られた。 トーロンマンの消化器系には、肉食の痕跡が全くなかった。消化の様子から、トーロンマンが最後の食事をとってから12~24時間生きていたことは確実である。また彼は死の直前、丸一日食事をとらなかったのだという可能性もある。同様の野菜スープは当時の人々にとって珍しいものではなかったが、2つの点が興味深かった: スープには野生・栽培を問わず、多くの種類の種が含まれていた。これらの種はすぐ利用できるものではなく、特別な出来事の際に集められた可能性もある。 スープは、彼が発見された地域では春に採れる野菜の種子で作られていた。
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