科学的説明に関するD-NモデルとI-Sモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/26 19:11 UTC 版)
「カール・グスタフ・ヘンペル」の記事における「科学的説明に関するD-NモデルとI-Sモデル」の解説
ヘンペルは、科学的説明の基本形とは、普遍法則と初期条件から説明されるべき現象を演繹するというものであると考えた。これが科学的説明に関する演繹的法則的モデル(deductive-nomological model, D-Nモデルという略称が使われることも多い)と呼ばれるものである。たとえば、手に持った石を放すとまっすぐ地面に向って落ちて行くという現象は万有引力の法則という普遍法則と与えられた初期条件から導き出すことができ、それによってこの現象が説明されたことになる。 D-Nモデルは決定論的な法則にしか使えないので、ヘンペルは統計的法則を使った説明には別のモデルを考えた。それが帰納的統計的モデル(inductive-statistical model, I-Sモデルという略称が使われることも多い)である。この場合には、ある現象が観測されるだろうということが、統計的法則と初期条件から帰納的に導出される。 D-Nモデルは旗竿のパラドックスをはじめ多くのパラドックスを抱えており、科学的説明のモデルとしては不完全なものであったが、かえってそのためにパラドックスを解こうといろいろな科学哲学者が試み、科学的説明がその後数十年にわたって科学哲学の主要問題として論じられ続けることになった。つまり、ヘンペルの貢献は、一つのモデルを提供したという以上に、一つの研究分野を作ったという点にある。
※この「科学的説明に関するD-NモデルとI-Sモデル」の解説は、「カール・グスタフ・ヘンペル」の解説の一部です。
「科学的説明に関するD-NモデルとI-Sモデル」を含む「カール・グスタフ・ヘンペル」の記事については、「カール・グスタフ・ヘンペル」の概要を参照ください。
- 科学的説明に関するD-NモデルとI-Sモデルのページへのリンク