研究公正の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/02 02:06 UTC 版)
大阪大学の池田光穂・教授の説明。 研究公正とは、研究における公正性、誠実さ、高潔さのことをさす。Integrity とは道徳的な価値を表現する用語であるが、実質的には「研究における不正行為(Research Misconduct)」を取り締まるため権威を表現する用語でもある。したがって、研究の公正性を毀損する行為とその集合的概念である研究不正 (Research Misconduct)との対概念で理解する必要がある。米国の研究公正局は、研究公正を次のように定義している。 Research integrity may be defined as active adherence to the ethical principles and professional standards essential for the responsible practice of research.研究公正とは、〈倫理的諸原則の積極的な厳守〉と〈研究の責任ある実践に不可欠な専門職がもつべき基準〉として定義することができよう。 研究公正局の定義によると、研究公正は〈倫理の厳守〉と〈研究専門職の行動規範〉という2つの側面をあわせもつことがよくわかる。 すなわち、研究を公正におこなうとは、(1)組織の研究者としての倫理規範(コンプライアンス)と、(2)研究専門職の行動規範――研究不正を おこなわないという否定的面から公正で創造性を実現する肯定的側面へ――の遵守という側面がある。 — 研究公正 Research Integrity、池田光穂 米国科学アカデミーの説明。 研究公正を保つための研究行動研究の提案、実行、評価において、正直でフェアーであること 研究の提案・発表において、先行研究の記述は正確でフェアーであること ピアレビューにおいて、熟練した能力がありフェアーであること 科学上の相互関係、コミュニケーション、資源(研究試料・器材)は、同じ仲間として円満に共有する関係を保つこと 利益相反を開示すること 研究実施では、ヒト材料の保護規則を順守すること 研究実施では、実験動物保護規則を順守すること 師と弟子の責務を順守すること 科学は自分のアイデアと研究結果に固執することを奨励、いや、必要とするが、研究公正では、先入観に固執してはならない。データを客観的に検討し、素直に導かれて結論に至る。 — Research Integrity、Stanley G. Korenman 米国・NIHの説明。 研究公正を保つための研究行動研究の提案、実行、評価において、正直で証明可能な方法を使うこと 規則、規制、ガイドラインの順守に注意して研究結果を報告・発表すること 研究界で一般的に受入れられている作法や規範に従うこと 科学研究で共有する4つの価値 正直:先行研究を正直に伝え、敬意を示す(引用する) 精度:発見を正確に伝え 間違いを避ける 効率:資源を賢く使い、無駄を避ける 客観性:事実のままに伝え、不適切なバイアスをしない — National Institutes of Health (NIH) Grants Policy 研究公正は、国として米国、学問分野としては生命科学を中心に議論され確立された。 研究公正の概念・行動は、国の文化・社会構造・価値観にも依存するが、研究活動が国際的な現在、米国のスタイルに準じて、国際的に統一されつつある。 また、研究公正の概念・対処は、学問分野によって異なり面もあるが、生命科学のスタイルが、学問分野を横断して適用されつつある。
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