石炭火災による隔壁強度低下説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 07:29 UTC 版)
「タイタニック (客船)」の記事における「石炭火災による隔壁強度低下説」の解説
1912年の事故調査・査問委員会(英語版)で石炭火災が取り上げられたが、沈没事故とは無関係とされ、大した火災ではなかったというのが定説だった。 しかし、タイタニックの専門家であるセナン・モロニー(英語版)によると「タイタニックの出港前の写真で船体側面(第6ボイラーの石炭倉庫のあたり)に約9メートルほどの焦げ跡が確認できる」とされており、実際、タイタニックの石炭庫では、ベルファストの造船所の港を離れる前から自然発火による石炭火災が起きていた。石炭を積んだのは出港する3週間前である。また、当時はイギリス国内の炭鉱でストライキが起こっており、十分な石炭が確保できなかった。 1912年4月10日、サウサンプトン港で乗客を乗せた時点で、火災は消火できておらず、その結果、加熱された部分の鋼材の強度は最大で75パーセント低下し、船体の構造の一部がすでに脆くなっていたことが沈没のおもな原因で、4月14日深夜の氷山との衝突は沈没のトリガーになったに過ぎないと主張し、2010年代後半には注目される有力説となった。 沈没事故の数日後のニューヨークの新聞に掲載された、ジョン・ディリーというボイラーマンが波止場で記者に話したことによると、 火災はベルファストの造船所を離れた日に発見された。 石炭はデッキ3層分の高さの量だった。 ディリーは、11人の作業員とともに消火にあたったが鎮火できなかった(それだけの人数で対応したにもかかわらず、簡単に消火できなかったとすれば、非常に大きな火災だったと考えられる)。 石炭倉庫には、何百トンもの石炭があった。我々は全く無力だった。 出港した日からタイタニックは燃えていた。 という。 石炭火災の専門家によると、 自然発火した石炭は、石炭の中心部の温度が徐々に上昇し、摂氏500 - 1000度になる。 臭いなどで気がついたときには、すでに手遅れである。 石炭倉庫は隔壁と接しているため、船体の強度に影響する。 消火するにはボイラーにくべて燃やすしかなくスピードを落とせない。加えて横断にギリギリの石炭しか確保できなかったため、一度スピードを落とすと燃料切れの危険があった。 ボイラー作業員160人のうち、アメリカまで向かったのはわずか8人だけである。このように作業員が入れ替わったことは前例がない。また、当時英国でタイタニック号事故調査・査問委員会を指揮した委員長のジョン・ビンガム(初代マージー子爵)(英語版)は、不自然なまでに石炭火災の影響を無視し、却下する審判指揮をしている。
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