知覚の限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 04:53 UTC 版)
人間の耳は、一般に20Hzから20,000 Hz (20 kHz) の音を知覚する。上限は加齢と共に低くなる傾向があり、成人では一般に16kHz より高い音は聞こえない。耳は20Hz 未満の音は知覚できないが、触覚で感じることができる[要出典]。 耳の周波数識別能力としては、中音域で約2Hz 以上の違いを聞き分けることができる。ただし、別の手段でそれ以下の周波数の違いを知覚することもできる。例えば、2つの近い周波数の音があると、別の低い周波数の音の変化が聞こえる。いわゆるうなりである。 人間の耳は周波数を対数的に知覚する。言い換えれば、知覚される音高は周波数と指数関数的関係にある。音階がその例で、1オクターブ音高が上がると基本周波数は約2倍になる。ある音の周波数を約 2 1 12 {\displaystyle 2^{\frac {1}{12}}} 倍すると、次の半音高い音になる。半音12個分高いと1オクターブ高い音になるので、 2 12 12 {\displaystyle 2^{\frac {12}{12}}} すなわち2倍の周波数ということになる。 つまり、西洋の音楽で使われている半音による音階は、周波数に対して線形ではなく、対数的である。聴覚の研究で使われるMel尺度やBark尺度も経験則から設定されており、やはり周波数に対して対数的である。 また音の大きさに対する知覚も対数的であり、音の大きさの尺度の一つdB も対数的に定義される。 聞こえる音の大きさの範囲は幅広い。我々の鼓膜は音圧変化に敏感である。可聴な最小の音を0dB と定義するが、上限は明確には定義できない。音の大きさの上限は、物理的に耳に障害が発生する限界、つまり聴覚障害を引き起こす音の大きさということになる。これは、その音が連続する時間にも依存する。120 dB の音は、短時間なら後遺症を引き起こさない(不快あるいは苦痛を伴う可能性はある)が、80 dB の音を長時間聞き続けると、後遺症が残る可能性がある[要出典]。 可聴な最小の音をもっと厳密に測定してみると、周波数によって可聴な最小の音の大きさが異なることがわかる。様々な周波数で聞こえる最小の音を測定していくと、周波数を横軸とした最小可聴値 (ATH) 曲線が得られる。一般に、耳の感度(ATHの最小点)は1kHzから5kHzの間にピークがあるが、その値は加齢と共に変化し、老人になるほど2kHz 以上の感度が悪くなる[要出典]。 ATH は最小の等ラウドネス曲線である。等ラウドネス曲線は可聴周波数範囲について音圧レベル (dB) で表され、同じ大きさと知覚される音圧を表す。等ラウドネス曲線を初めて測定したのは、1933年、ベル研究所の Fletcher と Munson で、ヘッドホンで純粋な音を再生して測定された。彼らはその曲線を Fletcher-Munson 曲線と呼んだ。各人が主観的に音の大きさをどう感じているかは測定が困難であるため、Fletcher-Munson 曲線は多人数の測定結果を平均して描かれた。 1956年、Robinson と Dadson が測定手法を改善し、無響室で前面からの音を使って新たな等ラウドネス曲線を得た。Robinson-Dadson 曲線は1986年、ISO 226 として標準化された。2003年、12か国の研究で得られたデータを元に ISO 226 が改版され、等ラウドネス曲線と名づけられるようになった。
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