病気における役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 15:26 UTC 版)
マクロファージは、動物が病原体による感染から身を守る感染防御の機構において、その初期段階での殺菌を行うとともに、抗原提示によって抗体の産生を行うための最初のシグナルとして働くなど、重要な恒常性維持機構の一角を担っている。 その一方で、過剰な活性化などのマクロファージ機能の異常は、免疫システムの多くの病気に関わっている。例えば、炎症壊死を起こした組織を覆い、肉芽腫を形成する。また、アテローム性動脈硬化が進行する上でも重要である。マクロファージの役割の1つとして、血管壁にたまった変性コレステロールの処理があるが、変性コレステロールが処理しきれないほど多く存在する場合、血管壁の下に潜りこんだまま泡沫化しその場に沈着する。これがアテローム性動脈硬化の原因である。 また一部の病原細菌やウイルスには、マクロファージによって貪食されても、その食作用を回避する機能を獲得しているものがある。細菌としては、リステリア、赤痢菌、チフス菌、レジオネラ、結核菌などがその代表である。またウイルスでは、エイズの病原体であるヒト免疫不全ウイルス (HIV) が、ヘルパーT細胞とマクロファージに感染する。マクロファージによる殺菌を免れた病原体は、その細胞内部に感染(細胞内感染)する。マクロファージ自体は強い殺菌作用を持っているが、その内部には抗体やその他の免疫による攻撃が到達しないため、病原体が感染したマクロファージは却って病原体を保存したり、全身に運んだりすることで、その病原性の発揮に関与する。例えば、チフス菌は腸管に侵入した後、腸間膜リンパ節のマクロファージに感染して血流に入り込んで、全身性の感染(菌血症)を起こす。また結核菌やHIVでは、マクロファージ内に感染した病原体は長期に亘って潜伏感染し、感染後、長時間が経過してから重篤な病状が現れる。
※この「病気における役割」の解説は、「マクロファージ」の解説の一部です。
「病気における役割」を含む「マクロファージ」の記事については、「マクロファージ」の概要を参照ください。
- 病気における役割のページへのリンク