画家
『月と六ペンス』(モーム) ロンドンの株式仲買人ストリックランドは、40歳で職を捨て妻子を捨てて、絵を書き始める〔*ゴーギャンがモデル〕。彼は、恩人の妻を奪う(*→〔病気〕9b)などのことをした後、タヒチ島へ渡る。島の娘アダと結婚して、ようやく安住の地を得たストリックランドは、数々の傑作を描く。晩年、彼は癩病に侵される。彼は自分の住む小屋の壁一面に、エデンの園を思わせる巨大な絵を描き、「自分の死後は小屋もろとも、この絵を焼き払え」と妻に遺言して、死んで行く。
『モンパルナスの灯』(ベッケル) 画家モジリアニの絵は世間に受け入れられず、しかも彼は健康を害していた。画商モレルは「モジリアニが死ねば、彼の絵は高額で売れる」と考え、モジリアニの死ぬ日を待っていた。ある夜モレルは、モジリアニが路上に倒れるのを見、彼を病院へ運んで臨終を見届ける。モレルは直ちに、安アパートのモジリアニの部屋へ行き、彼の絵を買い占める。モジリアニの死を知らぬ妻ジャンヌは、涙を浮かべて感謝の言葉を述べる。
『金と銀』(谷崎潤一郎) 天才画家・青野は、展覧会に出品する「マアタンギイ(=阿難尊者を邪淫の闇へ陥れた妖女)の閨」の絵を描くうちに、「人間が見ることを許されぬ美の世界を開示しようとする自分は、神罰を受けて死ぬのではないか」と予感する。ある夜、青野は彼に嫉妬する画家・大川に襲われ、脳髄を損傷する。その結果、青野は白痴の廃人となったが、彼の魂は初めて憧れの芸術の世界へ高く舞い上がり、永遠の美の姿を見た。
★3.贋作画家。
『帰ッテキタせぇるすまん』(藤子不二雄A)「贋作屋」 只野完作は抽象画ばかり描いて、まったく売れない画家だった。喪黒福造が、只野に模写の才能があることを見抜き、名画の贋作をさせて売りさばく。贋作を承知で買う客も多く、只野は高収入を得るが、「喪黒にピンハネされているのではないか」と疑ったため、喪黒は只野を見捨てて去る。もとの貧乏に戻った只野は、1万円札でタバコを買って、つり銭を得ようとする。それは絵で描いた1万円札だったので、たちまち見破られてしまった。
『真贋の森』(松本清張) 東大で日本美術史を専攻した「俺」は実力がありながら、権威主義の指導教授に嫌われ、学界から追放された。「俺」は、売れない画家・鳳岳を指導して、浦上玉堂の贋作を描かせる。それを学界の権威者たちに「真作である」と鑑定させ、その後に贋作であることを暴露して、空疎なアカデミズムを嘲笑してやろう、と考えたのである。しかし鳳岳が「自分だって玉堂くらいの腕はある」と画家仲間に言ったことから、計画は破綻する。
*にせの美術品や宝物を偽造する→〔にせもの〕2a・2b・2c。
★4.盲目になった画家。
『その妹』(武者小路実篤) 貧しい青年画家・野村広次は戦地に召集され、盲目になって帰還した。彼は絵を断念し、小説で身を立てようとするが、それも、文字を書き取ってくれる援助者が必要で、1人では何もできない。妹静子は、兄広次が何とか生活していけるように、身売り同然にして相川三郎に嫁ぐ(*→〔風呂〕8)。広次はそれをとめることもできず、「俺は力がほしい」とつぶやく。
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