男女平等パラドックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 22:39 UTC 版)
「STEM教育」の記事における「男女平等パラドックス」の解説
イギリスのWISE をはじめとして、STEM分野の男女比を均衡させようとするキャンペーンが各国で行われている。女子学生にSTEM分野のメンターを割り当てるミリオン・ウィメン・メンターズ・イニシアティブや、ベライゾンの#InspireHerMindプログラムのようなメンタリング・プログラムもその一例である。オバマ政権下のアメリカでは、科学技術政策局はEducate to Innovateキャンペーンを展開すると同時に、女性にSTEM分野への参加を促すためにホワイトハウスの女性および少女に関する評議会と協同していた。 STEM分野は女性の参画が少なく、STEM職で女性が占める割合はアメリカで25%以下、イギリスでは約13%、日本では約8.1%である。アメリカではこの傾向の原因を探る研究が多数行われており、一例として求人と雇用のプロセスに理由を求めるものがある。とはいえ、高度専門職の指導的な地位に就いた女性はアメリカ国内に数多く、国防総省、NASA、NSFなどに例を見つけることができる。STEM分野で働く女性はほかの職業の女性より平均で33%高い収入を得ている。 アメリカの労働力人口の半分が女性であるにもかかわらず、STEM職に占める女性の割合は25%前後である。女性とほかのマイノリティとで大学生の75%を占めるが、STEM学科の学位取得者に限ると45%である。女性の学部学生でSTEM分野の学位を取得するのは12%、卒業後にSTEM分野で就職するのは3%に過ぎない。NSFによれば、アメリカ国内で科学者もしくはエンジニアとして働いているのはアジア系女性のわずか5%、アフリカ系女性の5%、ヒスパニック女性の2%に過ぎない。全分野では学位取得者の60%近くが女性であるのに対し、例えば計算機科学ではこの割合は20%以下となる。 ミズーリ州立大学心理科学部のデビッド・ギアリー教授によると67カ国・地域の475,000人の青少年データを分析したところ、世界平均的に男の学力は科学や数学に秀でいる傾向があり、女は読解力に秀でることが判明させた。科学・数学を得意とする学生はSTEM分野に入る可能性が高いため、男性が多いとしている。この傾向は男女平等的とされる国に住む女性および女性にとってより大きく、フィンランド・ノルウェー・スウェーデンなどの国では、STEMの卒業生の割合は女性が少なくなる。対照的に、トルコやアルジェリアなど男女不平等な国では、STEM卒業生の女性の割合が上記の国よりもはるかに高かった。社会が男女平等になる国ほど、女性はSTEMで学位を取得する可能性は低い数値になったことをデビット教授は男女平等パラドックスと呼んでいる。彼は男女と平等の高い国では、STEMに女性が積極的に参加することが奨励されているが、個人の選択肢が重視される国なので自らの文系の学問的な強みを活かそうとする女性の選択のために、より多くの女の子を失うと分析している。このように読解力など個人的な文系学問への強み・科学への関心の低下を高度に発展した先進国でSTEMの進路を選ぶ女性がほとんどいない理由だと統計分析結果から説明している。
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