生物的超知能の実現可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 22:26 UTC 版)
カール・セーガンは、帝王切開と体外受精の発明が、人類の頭部がより大きく進化することにつながり、自然選択によって人類の知能(英語版)の遺伝的要素が改善する可能性を示唆した。それに反し、ジェラルド・クラブツリー(英語版)は減少した選択圧が、何世紀にもわたって緩慢な人類の知能の低下を招いていると指摘し、この傾向は未来においても継続する可能性が高いと主張する。これらふたつの可能性について科学的に一致した見解は存在せず、いずれの場合でも生物学的変化の速度は(特に文化的変化との比較では)緩慢なものになる。 人為選択、スマートドラッグ、NSI-189(英語版)、モノアミン酸化酵素阻害薬、エピジェネティクス調節、遺伝子工学などの方法は、より急速に人類の知能を向上させる可能性がある。ボストロムによれば、人類が知能の遺伝的要素の理解に至った場合、着床前診断を使用しての胎芽の人為選択により(胎芽2個から1個を選択する場合)最大で4ポイントのIQ向上がもたらされ、方法によってはさらなる向上も可能になる。(たとえば、1000個の胎芽から1個を選択した場合、IQが最大で24.3ポイント向上する)この種の選択が何世代にもわたって繰り返された場合、その効果はさらに1桁大きなものになる。ボストロムは、新たな配偶子を胚性幹細胞から得ることで選択プロセスの急速な反復が可能になることを示唆している。この種の選択によって生まれた高知能の人類による、うまく組織化された社会は集団的超知能を獲得する可能性がある。 別の可能性として、現状のレベルの知能の人類でも、個人をうまく組織化することで集団的知性を実現できる可能性がある。いくつかの著作において、人類文明または人類文明のある側面(たとえば、インターネットや経済)が、グローバル・ブレイン(英語版)としての機能に近づきつつあることが示唆されてきた。グローバル・ブレインは構成要素となる人類を大きく上回る能力を発揮するとされるが、この種の超知能が基盤とするシステムが人工知能の構成要素に強く依存している場合、それは生物的な超個体というよりもむしろ人工知能として扱われる可能性がある。 知能増幅の最終的な手段のひとつは、人類の社会的・生殖的なダイナミクスではなく、直接的に脳神経系を強化することである。その際の手段としては、スマートドラッグの使用、体細胞遺伝子治療、ブレイン・コンピュータ・インタフェースなどが挙げられる。しかしながら、ボストロムは最初のふたつのアプローチに関してはその拡張性への懐疑的な見解を示し、一方で超知能を有するサイボーグインタフェースの設計はAI完全問題になると主張している。
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