生物研究と雑菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/23 22:43 UTC 版)
微生物や生物組織を培養して研究する実験の過程で、研究対象以外の微生物=雑菌が紛れ込むことは、その実験が失敗する致命的な原因の一つである。このため研究者は、使用する器具や試薬を滅菌したり無菌操作を行うなど、雑菌が混入しないよう細心の注意を払う。詳しくはコンタミネーション(通称コンタミ)の項を参照。 実験の過程に雑菌として出現する微生物の種類はある程度の範囲に絞られる。これらに共通する特徴としては、人家周辺に多く出現すること、多くの胞子を形成すること、空中を漂って侵入すること(=空中落下菌、空中浮遊菌)、成長速度が早いこと、あまり特殊な栄養要求性を持たない(好き嫌いが少ない)ことなどが挙げられ、菌類、細菌の中で、これらの条件に合致するものがしばしば雑菌混入の原因になる。 菌類の場合、よく出現するものにアオカビ、コウジカビ、クラドスポリウムなどがある。いずれも、人家の食べ物などにも出現する機会が多い、雑草的な菌類である。また、特にアオカビは、ごく小さなコロニーでも胞子形成を始めるので、除去が困難である。他に、クモノスカビとアカパンカビは、出現頻度は低いものの、侵入すると一晩でシャーレを覆いつくす成長速度を持ち、恐れられる。 細菌では、しばしば枯草菌や放線菌などの空中落下菌がコンタミの原因になる。特に枯草菌に代表されるバシラス属の細菌は、耐久性の高い芽胞を作り出すため、無菌操作が不適切であると出現しやすい。緑膿菌などの水中雑菌、ヒトの表皮に付着しているブドウ球菌などの常在細菌もまた、滅菌や無菌操作が不適切なときには器具や手指を介した汚染の原因になりやすい。また動物細胞を培養する実験では、マイコプラズマの混入が問題になることも多い。マイコプラズマは極めて小さい不定形の細菌であるためろ過滅菌によって除くことが出来ず、また有効な抗生物質が限られることから、対処して除染することは難しい。
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