生成・用途
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 22:32 UTC 版)
先述したとおり、210Poはウラン鉱石中にわずかしか含まれていないため、鉱石からの抽出は現実的ではない。人工的に210Poを得るには、209Biに中性子線を照射し、中性子捕獲で210Biになったものが210Poにベータ崩壊して生じたものを使用する。1kgの209Biを原子炉で1ヶ月間照射して得られる210Poは3000億Bqであり、質量で約1.7mgである。厚さ0.1mmの209Bi板に加速した10MeVの重陽子を10日間照射して得られる210Poは400億Bqであり、質量で約0.2mgである。 83 209 B i + 0 1 n ⟶ 83 210 B i → 5.012 d a y s β − 84 210 P o {\displaystyle \mathrm {^{209}_{\ 83}Bi\ +\ _{0}^{1}n\ \longrightarrow \ _{\ 83}^{210}Bi\ {\xrightarrow[{5.012\ days}]{\beta ^{-}}}\ _{\ 84}^{210}Po} } 210Poが崩壊して放出されるアルファ線は強い電離作用を持つため、静電気を除去する装置に使われている。これは一般人でもごく普通に入手できる装置である。アルファ線の装置は、コロナ放電、X線、紫外線を用いた装置よりもいくつか優れた性質を持つといわれる。後述するとおり210Poは極めて毒性が強いが、210Poが外部に漏れ出さないように、金や銀など、別の金属の間に209Biを挟み、先述した中性子線の照射における中性子捕獲によって210Poを発生させる事によって安全性を保っている。 210Poは、放射性物質が崩壊する際に出す熱をゼーベック効果によって電力に変える放射性同位体熱電気転換器 (RTG) に使われる事がある。これは1950年代にアメリカ原子力委員会によって作られた初期のRTGのいくつかに使用された。210Poはわずか1gで約140Wという驚異的な出力を生み出す。これは現在主流に使われている238Puの260倍である。ただし、自発核分裂などの他の崩壊モードが全く存在せず、極めてわずかなガンマ線以外は遮断が容易なアルファ線しか放出しない性質は優秀なものの、出力の高さに起因する半減期が短いことから短期間しか使えず、また適切な冷却系がないと、210Po固体の温度は500℃に達し、自己の熱で融解・蒸発してしまうことから、用途が限られてしまう。現在のRTGはより優秀な核種である238Puや90Srなどに置き換わっている。 また、1945年に長崎市に投下された原子爆弾であるファットマンをはじめとして、初期のインプロージョン方式原子爆弾の中性子点火剤に用いられた。これは、爆縮によって9Beと210Poが混合され、210Poが放出したアルファ線を9Beが受け取り核反応を起こす。すると9Beは12Cに変化し、余った中性子はアルファ線と同じ方向に周期的にたたき出すことを利用している。現在でもその性質を利用して、携帯用の中性子線源として利用される。 Be 4 9 + He 2 4 ⟶ C 6 12 + n 0 1 {\displaystyle {\ce {{}^9_4Be + {}^4_2He -> ^12_6C + ^1_0n}}}
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