環Aと環Dのカップリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/01 03:27 UTC 版)
「ビタミンB12全合成」の記事における「環Aと環Dのカップリング」の解説
アミン7とカルボン酸18は、カルボン酸を塩化物にすることで縮合しアミド19になる。tert-ブチルアルコール中でカリウム tert-ブトキシドを作用させるとマイケル付加により六員環化合物20が生成する。このとき水素原子はトランスの位置関係になる。ここで、後で芳香環を部分還元することを見越し、化合物に保護基を導入する。それはケタール21のカルボニル基とイミニウム塩22(トリエチルオキソニウム四フッ化ホウ素塩(英語版))およびオルトアミド23(ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を反応させる)のエノールエーテルである。エノールエーテル24は化合物をトルエン中で加熱し、エタノールを取り除くことで得られる。これをバーチ還元してテトラエン25を合成し、さらに酸処理することでジケトン26 を得る。これはペンタシクロノン(pentacyclenone)と命名されている。 ビタミンB12の環ADのカップリングアセタール化合物26の保護基は酸加水分解でケトン27に再生される。ジオキシム27のうち最もじゃまなケトン基を亜硝酸および酢酸で選択的加水分解することでモノオキシム28が生成する。ここで新たに加わる窒素原子が環ADの完成に必要な2番目の窒素原子となる。次にシクロペンテン環とシクロヘキセノン(英語版)環がどちらもオゾンによるオゾン分解で酸化され、トリケトン29ができる。アルドール縮合(英語版)によって1位と5位のカルボニル基(ピロリジンアセテートと呼ばれる部分)が縮合しシクロヘキセン30が生成する。これと同時にオキシム基がトシル化するほか、過ヨウ素酸によってシクロヘキセン環が酸化開裂し、ジアゾメタンが酸化開裂によって生成したカルボキシ基をエステル化して、化合物31が生成する。これをポリスチレンスルホン酸(英語版)ナトリウム(イオン交換樹脂)のメタノール溶液中で 2時間、170°Cで加熱するとベックマン転位が起こり、ラクタム32が生成する(ただしこれは単離されない)。これがさらに反応して4つの環をもつ化合物33(α-コルノルステロン)が生成する。ここではアミンカルボニル縮合(英語版)とアルドール縮合が連続して起こる。この化合物ではラクタムの開環は起こらない側鎖であるプロピオン酸エステルの立体化学が適切ではないためα-コルノルステロンはエピマーのβ-コルノルステロン34に変換される。β体はまず過剰の塩基で両者を平衡状態にし、酸性に戻してジアゾメタンで処理することで得られる。34にメタノールとチオフェノールを同時に反応させることで35が得られる。このときメタノールはカルボニル基、チオールは炭素-窒素結合をそれぞれ攻撃する。これでイミダゾール末端が何に変化するかはっきりわかるようになる。これをオゾン分解してアルデヒド36とアンモニアが得られる。このときチオエステルはアミド基に変換される。このアミド基が水素化ホウ素ナトリウムによりアルデヒド還元されメチロール基に、さらにメタンスルホン酸無水物でメシル(英語版)化、臭化リチウムでブロモ化(英語版)されて臭化物37が生成する。このアミド基がニトリル基に変換されれば環ADの反応は終了となる。 ビタミンB12の環ADのカップリング後の反応
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