現代ポートフォリオ理論と資本資産価格モデル(CAPM)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 04:16 UTC 版)
「金融経済学」の記事における「現代ポートフォリオ理論と資本資産価格モデル(CAPM)」の解説
詳細は「現代ポートフォリオ理論」および「資本資産価格モデル」を参照 1952年にハリー・マーコビッツは危険回避的な経済主体を想定し、平均分散分析(英: mean-variance analysis)と呼ばれる完全市場の下でのポートフォリオ選択理論を考案した。その後、ジェームズ・トービンにより平均分散分析と期待効用最大化の関係が検討され、分離定理(英: separation theorem)(もしくは投資信託定理(英: mutual fund theorem))と呼ばれる、ある特定の平均分散的に効率的なポートフォリオ(接点ポートフォリオ)と安全資産への投資比率を変化させるだけで効率的フロンティアを再現できるという定理が示された。 さらに平均分散分析を行うリスク回避的な経済主体による完全市場の下での一般均衡モデルとして資本資産価格モデル(英: capital asset pricing model, CAPM)がウィリアム・シャープ、John Lintner(英語版)、Jan Mossin(英語版)により独立に発表された。 CAPMによれば任意の金融資産 i {\displaystyle i} の収益率 R i {\displaystyle R_{i}} は次の式に従う。 E [ R i ] − R f = β i ( E [ R m ] − R f ) {\displaystyle E[R_{i}]-R_{f}=\beta _{i}{\Big (}E[R_{m}]-R_{f}{\Big )}} ここで R f {\displaystyle R_{f}} は安全資産の利子率であり、 R m {\displaystyle R_{m}} は市場ポートフォリオと呼ばれるポートフォリオの収益率となる。実証研究においては、市場ポートフォリオにはS&P500などの時価総額加重平均型株価指数が用いられることが多い。 β i {\displaystyle \beta _{i}} は資産 i {\displaystyle i} のベータと呼ばれ、CAPMは資産 i {\displaystyle i} のリスクプレミアムが市場ポートフォリオのリスクプレミアムの線形関数となっていることを述べている。資産 i {\displaystyle i} のベータは次の式を満たす。 β i = C o v ( R i , R m ) V a r ( R m ) {\displaystyle \beta _{i}={\frac {\mathrm {Cov} (R_{i},R_{m})}{\mathrm {Var} (R_{m})}}} 上述の式のようにCAPMの下では安全資産の存在が仮定されているが、1972年にフィッシャー・ブラックは安全資産の存在を仮定せずともCAPMが成り立つというゼロベータCAPMを導出した。 またウィリアム・シャープは1966年に平均分散分析の観点に従ってポートフォリオのパフォーマンスを測る指標としてシャープレシオ(英: Sharpe ratio)を提案した。シャープレシオ S {\displaystyle S} はポートフォリオの収益率を R p {\displaystyle R_{p}} として次で定義される。 S = E [ R p ] − R f V a r ( R p ) {\displaystyle S={\frac {E[R_{p}]-R_{f}}{\sqrt {\mathrm {Var} (R_{p})}}}} CAPMは静学的な収益率の関係を記述しているが、動学的構造を加味したモデルとしてロバート・マートンが1973年に発表した異時点間CAPM(英: intertemporal capital asset pricing model, ICAPM)がある。 またCAPMの共通リスクファクターは市場ポートフォリオだけであるが、複数の共通リスクファクターを持つ場合を考えた裁定価格理論(英: arbitrage pricing theory, APT)がStephen Ross(英語版)によって1976年に考案されている。 さらに経済主体の消費を用いてCAPMと確率的割引ファクターを結びつけたモデルとして消費CAPM(英: consumption capital asset pricing model, CCAPM)がある。 CAPMの開発後も多数の資産価格モデルが考案されたが、CAPMは依然として最も重要な資産価格モデルであり、実務上も事前的なポートフォリオ選択のみならず事後的なパフォーマンス評価にも用いられている。 現代ポートフォリオ理論に関する功績からジェームズ・トービンは1981年に、ハリー・マーコビッツとウィリアム・シャープは1990年にノーベル経済学賞を受賞している。
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