ゼロベータCAPM
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 04:08 UTC 版)
「資本資産価格モデル」の記事における「ゼロベータCAPM」の解説
CAPMには無リスク資産の存在が仮定されている。しかし1972年にフィッシャー・ブラックは無リスク資産の存在を仮定しないCAPMとしてゼロベータCAPM(英: zero-beta CAPM)を導出した論文を発表した。ゼロベータCAPMの下で金融市場における任意の金融資産 i {\displaystyle i} の期待収益率 E [ R i ] {\displaystyle E[R_{i}]} は次の式を満たす。 E [ R i ] − r z = β i m ( E [ R m ] − r z ) {\displaystyle E[R_{i}]-r_{\mathrm {z} }=\beta _{i\mathrm {m} }{\Big (}E[R_{\mathrm {m} }]-r_{\mathrm {z} }{\Big )}} ここで r z {\displaystyle r_{\mathrm {z} }} はゼロベータポートフォリオと呼ばれるポートフォリオの期待収益率で、その他の変数は前述のCAPMの式と同じものである。ゼロベータポートフォリオは以下のようにして作成される。まず市場ポートフォリオはリスク・リターン平面上において(リスク資産のみからなる)効率的フロンティア上にある。そこで市場ポートフォリオの点において効率的フロンティアの接線を引き、Y軸(リターン方向の軸)との交点を取る。その交点から水平線を引き、リスク資産の最小分散フロンティアとの交点を取る。するとこの水平線と最小分散フロンティアの交点上にあるポートフォリオがゼロベータポートフォリオとなる。 ゼロベータCAPMが生まれた背景としてフィッシャー・ブラック、マイケル・ジェンセン(英語版)、マイロン・ショールズによる研究がある。フィッシャー・ブラックがゼロベータCAPMを導出した論文中に述べられていることだが、彼ら3人の実証研究においてCAPMが一部成立しない結果が得られた。ベータが高い株式で組まれたポートフォリオの期待収益率は理論的な値より低くなり、逆にベータが低い株式で組まれたポートフォリオの期待収益率は理論的な値より高くなったのである。そこでベータがゼロとなるポートフォリオ(上のゼロベータポートフォリオ)を考え、市場ポートフォリオとゼロベータポートフォリオのリスクプレミアムによる2ファクターモデルを用いて推定を行った所、結果が改善する傾向が見られた。このような実証的結果の一つの説明として、無リスク資産を用いた資金の貸し借りが不可能なのではないか、という推論に至ったことによる。
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