特別陸戦隊
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特別陸戦隊とは、艦船乗員ではなく、鎮守府の海兵団など陸上部門の人員をもとに編成する陸戦隊のことである。艦船陸戦隊を長期行動させることには前述のように支障があることから、より長期間の陸上戦闘に対処するため編成される。日中戦争から太平洋戦争(大東亜戦争)にかけてのものは、後述の上海海軍特別陸戦隊を除くと「特設艦船部隊令」(1936年改正)に基づいて編成され、正式には特設鎮守府特別陸戦隊と呼ぶ。臨時に編成される特設部隊の建前ではあったが、中国情勢の緊迫化で陸戦隊の需要が増えたために事実上の常設部隊としての性格を持つようになった。第二次世界大戦期には上陸作戦や占領地の守備に任ずる専門の陸戦隊として運用された。太平洋戦争(大東亜戦争)中には、目標地点占領後に、固定的な警備隊や根拠地隊へ改編されたものも多い。特設鎮守府特別陸戦隊は、太平洋戦争(大東亜戦争)開戦時には特別陸戦隊11個、終結時には連合特別陸戦隊11個と特別陸戦隊54個が存在した。 特設鎮守府特別陸戦隊は、所属する鎮守府等の名称と番号を組み合わせて「横須賀鎮守府第三特別陸戦隊」(横三特)などの部隊名で呼ばれる。司令は中佐が多い。特設艦船部隊定員令による模式的な編制は、本部中隊と銃隊2個中隊(各小銃4個小隊と機銃小隊)及び特科隊からなる歩兵大隊相当の編成であるが、実際の編制はかなり多様である。太平洋戦争(大東亜戦争)初期には、2~3個小銃中隊と1~2個機銃中隊、砲隊を持つ1000~1500人規模の例が多かった。中には砲兵隊や戦車隊、海軍空挺部隊としての編制をとるものもあった。呉鎮守府第101特別陸戦隊に代表される「S特別陸戦隊」の秘匿名を与えられた特殊部隊も作られた。特別陸戦隊の場合も、複数が集まり、または防空隊などと組み合わされて「連合特別陸戦隊」となる場合がある。 特別陸戦隊は専門の地上戦闘部隊として戦車や機関短銃などの充実した装備を保有し、陸戦隊の中では高い練度を誇る精鋭とされた。ただし、若くて健康な現役兵や志願兵は艦船や航空隊に優先配分されたため、特別陸戦隊配属は予備役など高齢者や身体能力に劣る者が中心で、人員の素質の面では優れているとは言えない。例えば、日中戦争中に編成されて太平洋戦争(大東亜戦争)でもアンボンの戦いなどに参加した呉第一特別陸戦隊の場合、年齢37歳の大正12年徴兵者まで混じっていた。ラビの戦いに参加した特別陸戦隊も30歳以上の老兵が多かった。 上海海軍特別陸戦隊は、鎮守府所属ではなく上海に駐留するために編成された官衙たる常設部隊である。1927年より上海に駐留していた陸戦隊(鎮守府から派遣されていた特別陸戦隊2個大隊及び戦車隊等)を、第一次上海事変の起きた1932年に独立の特別陸戦隊として整理した。司令官は少将か大佐、複数大隊編制で特別陸戦隊と比べ大規模である。人員は各鎮守府から派出された。
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