物理量と単位の表記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 08:27 UTC 版)
物理量の測定とは、異なる物理量の値を2つとり、そのどちらか片方を基準とした時に、もう片方が基準としたほうの何倍になるかを決める行為である。このとき基準とした方の物理量を単位と呼ぶ。国際単位系(SI)の考え方では量の値(the value of a quantity)は数値(numerical value)と単位(unit)の積と捉えられ、そのように表現される。そして単位記号、量記号、数値記号はすべて通常の数式の演算規則に従う。 Q = q u {\displaystyle Q=\mathrm {q} \,\mathrm {u} } (1-1)例 L = 5 m {\displaystyle L=5\,\mathrm {m} } (1-1a) ただし、ひとつの量の値(量の大きさ)を表す数値記号と単位記号との間には空白(space)が置かれ、この空白が積を表す記号になる。また、ひとつの組立単位の表現のなかでの単位記号同士の積は空白または中点(half-height dot)で表す。なお、単位記号には、その周囲の文書の様式に関係なく立体を用いると定められている。また量記号は一般に、イタリック体(斜体)の単独の活字で表される。 式(1-1)は各項が物理量を表す量方程式であるが、数値方程式として数値を表す表記方法には次のようなものが知られている。 Q / u = q {\displaystyle Q/\mathrm {u} =\mathrm {q} } (1-2)例 L / m = 5 {\displaystyle L/\mathrm {m} =5} (1-2a) { Q } u = q {\displaystyle \{Q\}_{\mathrm {u} }=\mathrm {q} } (1-3)例 { L } m = 5 {\displaystyle \{L\}_{\mathrm {m} }=5} (1-3a) Q [ u ] = q {\displaystyle Q[\mathrm {u} ]=\mathrm {q} } (1-4) Q ( u ) = q {\displaystyle Q(\mathrm {u} )=\mathrm {q} } (1-4)'例 L [ m ] = 5 {\displaystyle L[\mathrm {m} ]=5} (1-4a) 例 L ( m ) = 5 {\displaystyle L(\mathrm {m} )=5} (1-4a)' 式(1-2)はSIで定められている表記であり、式(1-1)を通常の数式の演算規則に従って変形すれば得られる。表の項目名を式(1-1)の左辺の形で表記すると、項目には単位なしの数値のみを書くことになり、各項目に全て単位を記す手間が省ける。 式(1-3)はJIS-Z8202で例示されている表記であるが、推奨されているわけではない。そもそも、「量方程式は単位の選び方には無関係であるという利点がある」ので、「通常は、量方程式を用いるのが望ましい」とされている。この表記は、SI規則に沿ったイタリック体の量記号を中括弧で囲むことで、量の値ではなく数値を表していることを明示し、下付添え字で単位を示している。 また式(1-4)の表記はその使用法にも一貫性がないとの指摘がある。実際、日本の初等中等教育の教科書では、括弧で囲んだ単位記号をSIにおける単位記号と同様に扱うかのような、以下の(1-5)のような表記も使われており、誤解の余地が生じやすい面がある。 5 [ m ] , 5 ( m ) {\displaystyle \mathrm {5\ [m],\quad 5\ (m)} } (1-5) ただし、式(1-4)の記法を、(1-4)'にあるような、L(m) のような記法と均等と解釈した場合には、最近のPhysical Review Letters上の論文(例えば)でも頻繁に使用されていて、式(1-2)や式(1-3)のような記法は、(本来正式のはずだが)原著論文上ではほとんど見かけられないものであるので、現状最も「無難」であろう。(尚、(1-5)のような記法は、殆どみられない) 式(1-3)や式(1-4)の単位記号は量記号と一体となってひとつの数値変数を表しているのであり、単位記号だけを独立して移項したりできるものではない。式(1-4)の表記では量記号と単位記号の大きさが同等なので、式(1-3)に比べて両者が一体であることを失念する可能性が高いかも知れない。
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