版本との異動や作者による説明
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「知里幸恵ノート」の記事における「版本との異動や作者による説明」の解説
「知里幸恵ノート」は、20世紀前半期の日本語による優れた詩芸術作品としての『アイヌ神謡集』および著者の知里幸恵の研究に不可欠な基礎原稿であり、資料価値は高い。刊行本との比較により、表現の異動が確認できる例がある。 例えば『アイヌ神謡集』の冒頭作品「梟(フクロウ)の神の自ら歌った謡 銀の滴降る降るまわりに」の14行目は"Pirka chikappo! kamui chikappo! 「美ィい鳥! 神様の鳥!「ィ」は漢字文字「美」のフリガナで、著者は「いい鳥」と読み、「美い」(いい)と表現している。この冒頭箇所以降の「Pirka」について(続く2例は表現を「あの」に変えていることを除き)他はすべて「美い」ではなく「美しい」とし、著者は表現を使い分けている。『アイヌ神謡集』郷土研究社の初版本では「美い鳥! 神様の鳥!」と印刷(初版本は全体にフリガナはない)された。その後の複数の刊行本でも踏襲されていたが、岩波文庫版は初版から「美しい鳥!」と誤植している。財団法人北海道文学館(編)『大自然に抱擁されて… 知里幸恵『アイヌ神謡集』の世界へ』北海道文学館、2002年、所収の、抄録「知里幸恵ノート」でこの箇所は「美い鳥 神様の鳥」で文字「美」の上にフリガナの小さな文字「イ」を印刷している。 なお、最終ページ(北海道立図書館所蔵北方資料デジタルライブラリーの画像16)では、知里幸恵が自筆でこの神謡への想いを 金田一京助へ書き記している。 「此の歌は非常に、聞いてると優しい美い感じが致します。この節(ふし)が私は大好きなのでございます」 また、ノートにはアイヌのウポポ(神歌)について、知里幸恵から金田一京助への説明書きがある。 「Upopo や Rimse はたく山ありますが、何の訳かわからないのが多々御座います。とにかく、これは、みんな神を讚美する一つの美しい詩であると私は思います。私達の先祖は本当に詩人であったと思います。」 このノートに知里幸恵はウポポ(神歌)をアイヌ語と日本語で書き伝えている
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